« アニメ感想:獣の奏者 エリン 第39話 | トップページ | アニメ感想:青い文学 第一回「人間失格」 »

2009年10月10日 (土)

演劇感想:『京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)-人間豹の最期』

2009年10月10日(土)。国立劇場12時開演の部に配偶者と行ってきた。

前作の感想

前作が原作に沿ったのに対し、今回は完全オリジナルで、原作にない人間豹の最期をどう描くのか、先が読めないだけに期待は大きかった。前作同様、一見、地味であっけないような気もしたが、これこそが松本幸四郎演出の持ち味なのだろう(演劇は素人なので分からんが)。

今回は、乱歩といえば東京の筈が、舞台を、幕末の京都にして、動乱の世相の背景そのものが人間豹以上の魑魅魍魎という意図らしく、最大の敵は、法力を操る陰陽師となった。なにしろ明智も恩田も陰陽師の術に翻弄され、恩田に至っては空中に放り出された、つまり宙乗り。妖術と戦うとは乱歩らしくはないが、だからこその京都、なのだろう。動乱の京都が、乱歩の東京を圧倒した。

人間豹は悪の権化ではなく、人でなく獣でもない異形のはみ出し者、どこにも居場所を得られぬ暴れ者の異邦人、だから殺人を繰り返しても闇のヒーローという痛快さと悲劇性を伴った存在と定義づけられている。そして人殺しを自分の意思で止め、最期は、人間世界に引導を渡して我が身を焼きつくす。上で設定が乱歩らしくはない、と書いたが、この孤独な異形像こそが、究極の乱歩らしさ、だと思う。常に現代東京を舞台にしながら、あの子供じみた荒唐無稽さ、閉鎖性、疎外感の漂う乱歩の世界。

今回も市川染五郎のあっと驚く二役は、人間豹と、女形でもないのに大女で大子というあだ名の娘、みすず。体がデカ過ぎるので笑いをとる為かと思ったが、この女も、ある意味で異形のはみ出し者という意図だったか。

乱歩的ガジェットとしては、陰陽師の罠の一つ、鏡の中に封じ込める鏡地獄や、前作の明智が人形師の弟子だったという設定を受けて、その亡き師匠が遺した生き人形「花がたみ」に陰陽師が「人でなしの恋」をする等が面白かった。さらにこの花がたみが、陰陽師の法力で踊りだしたり、最後には、みすずの手鏡を手にしたためにその魂を受けて動き出し、陰陽師の術を手鏡で跳ねかえして追い詰めるというところが、私個人的にはフランケンシュタインを想起した。

|

« アニメ感想:獣の奏者 エリン 第39話 | トップページ | アニメ感想:青い文学 第一回「人間失格」 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 演劇感想:『京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)-人間豹の最期』:

« アニメ感想:獣の奏者 エリン 第39話 | トップページ | アニメ感想:青い文学 第一回「人間失格」 »