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2010年3月13日 (土)

マンガ感想:ちはやふる 8巻(講談社 末次由紀)

誇らしげに「2冠達成」の帯が、そしてその上には、襷を掛けた千早が花に囲まれて吠える。春の訪れを待ってはいられない、とでもいうように。

ペースが早い。この間、御菓子屋ものの新作も出たというのに。そして驚くべきテンションの高さ。その高さも維持しているのではない、頁を進める度にボルテージが上がっている(かなり当てられて私の日本語もおかしくなっている)。
少年誌のスポ根ものなら、対戦ごとに変な相手が現れて、その大ボラ加減に驚かされるだけなのだが、このスポ根マンガは違う。この驚異は何なのだ。
前クイーンの覇気の無さに憤り、かえって相手の闘争心を呼び覚ました上に空回りして敗北した千早(そういえば、矢吹ジョーもよく負けていたんだよなあ)、この間に「読手」に焦点を移して、かるただけでなく、読者に対しても、息を抜かせる作者の巧さ。
そして原田先生の勝負が、中年の頑張りで目配りの多彩さとユーモア。
その上で「敗者の一年が始まる」絶妙のネーム。
そして合間にかるたの恋の歌になぞらえつついかにも少女マンガなインターミッションエピソードを軽々とこなしていく。
感動の勝利場面にさえも「悔しい」を被せる徹底した心理描写の多層さ。
そしてBS中継。私もこのマンガの影響で、去年と今年、観た。しかも今年は、番組中にこの「ちはやふる」が特集されていたのだ。そして今巻を読んだこの日、NHKではかるたテーマの時代劇「咲くやこの花」がそろそろクライマックスだ。
しかし、さらにそこで読者を驚かせる、クイーンの姿の変貌振り。これは「逆力石徹」だろうか。こんなパターンを想像できた読者と作家が少年スポ根の世界にいるだろうか(失礼ながら私は、今回のクイーンを見て、現実の現役かるたクイーンを連想した)。
そして前に登場した時の、音の無いクイーンに対してニューバージョンのクイーンは、かるた「を」、ではなく、かるた「に」愛されたクイーン、この圧倒的存在感。
しかし、なんということだ、今巻のつかみは、このクイーンで決まりかと思ったら、作者のペンはとどまることをしらない、遂に名人がその姿の片鱗を見せた。しかも、その表現がまたすごい、クイーンを通じて「障る」とは。気に食わない奴だとは思っていたが、「障る」名人とは。
だが、まだ油断できない。名人の話は続くが、肉まんクンが、千早は、この名人に近い、と言っているではないか。恥をかく覚悟で、この意味を私は予想してみる。名人は千早と同じようにその耳で読手の発音の癖を聴き分けて、二字目を聴かずとも分かるのではないだろうか。

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