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2015年4月 5日 (日)

本感想:ことづて屋(ポプラ文庫ピュアフル)濱野京子・作 カスヤナガト・イラスト

ある日突然、死者からの声が聞こえ、生者へのことづてを頼まれる女性と、その実施にあたり対象者への訪問を手伝う、美容師の青年の物語連作。濱野京子としては、珍しい超自然的な設定、というか隠喩といってもいいだろう。
私は、葬儀というものは、結局死者自身の為ではなく残された者の為にある行事だ、残された者が如何にして過ごすべきか、心の決着をいかにするか、そういうものだと考えてる。そういう点から私が印象の強かった作品といえば、過去に吉田とし、の児童文学「大ちゃんの青い月」、近年ではライトノベルの企画でも「シゴフミ」というのもあった。(前者はこの点の先駆的名作。後者はアイディアを展開しきれなかったようだ)。
本書は、死者の伝言を「ことづて屋」山門津多恵が依頼の対象者に伝える行為を通して、故人と残された人々との様々な関係の過去と今が描かれるが、いずれも、何らかの心残りに「踏ん切りをつける」物語だ。
生と死で切り離されてしまった関係はもはや修復しようが無い。それゆえいずれも日常にリアルにありそうなエピソードばかりだが意味する所は重い。だからこそ物語が故人に振り当てる役割は、生者を気遣い、いくばくか心の平穏を回復させようとするものだ。
この「ことづて屋」の構成だが、津多恵が平凡な目立たない女性で、ひどい方向音痴で、谷中の霊園の辺り(※本書を読むまで私はてっきり文京区だとばかり思っていました)を歩くと落ち着くという設定。生者の情報過多な世界に翻弄され、彷徨い、その反動としての「あの辺り」に親和性を感じるのかもしれない、と考えると私は共感する。
相棒の青年美容師は、津多恵に話しかける口は悪いが「仕事」に向かう彼女のナビだけでなく、毎回凝った化粧を施す。化粧による変装や癒し、美容師だけに女性に優しい、というばかりでなく、化粧というシャーマニズム的な要素の効果も私的には捉えられた。
彼の働く谷中の美容院の店長は、中性的で女装が趣味という気のいい男性。二人を温かく見守る。
このトリオがいい。これでもっとミステリーもできると思った。本書も人の心の秘密を描くミステリー的な作品といえるし。

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