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2016年7月18日 (月)

本感想:「すべては平和のために」濱野京子・作。白井裕子・絵

日本児童文学者協会創立70周年記念出版「文学のピースウォーク」叢書。新日本出版社。作家「濱野京子」の為のお膳立てはそろったという感じだ。
昨今のニューストピックを振り返れば「戦争請負企業が跋扈するなら国家紛争調停企業が台頭するのは時間の問題」一方で「一人の少女の言動が世界を動かす」のも夢物語ではなくなった。それならば・・・と思考が展開していくのは当然かもしれない。さらに前世紀の眉村卓の作品群を彷彿とさせるのも、私の見当違いではないとも思う。
いつも書くことだが、私にとって濱野京子の小説は共感の世界。文学的な修辞、隠喩、手管、隠し玉、裏技の類はない、素手で真っ向から対峙する世界だ。今回はその意味でも書名からして、これまでの濱野京子の総決算ではないか、という期待で臨んだ。
物語進行の新機軸として序盤から一節毎に、ドキュメンタリーやノンフィクション的な畳み込むような記述の連続。これは、どこの国のどのトピックがモデルというものではない、世界の諸国の諸事情から抽出されてどこにでも、どの事情にも当てはまる。それが一気に架空の小国の小さな街に収斂されていく。
物語はまだ選挙権もない17歳の少女、平井和菜に課せられた地域紛争調停、期間はわずか丸二日。作中でもむだな描写をしている暇はない。彼女は限られた時間で真実を見極めなければならない。
紛争という名の欺瞞に満ちた戦争当事国の当事地である街の限られた当事者達が、和菜に、真実の断片を凝縮された情報として提供する、現地到着から4日目に和菜は人々の期待に応えることができるか。一方で各々の「思惑」を越えること=出し抜くことができるのか。
読了後、私は、和菜は期待に応えた、思惑を出し抜いた、と評価する。それは、フィクションではなく十分にリアリティのある結論だと思う。これは未来の物語ではあるが、上記したように重ねて昨今の世界のニュースを見ていれば、信じられる。
グローバリズムとインターネットが、理想なら世界を身近にする筈なのに、現行では「類は友を呼ぶ」止まり。
限定した興味のサークルだけになったネット社会に押しつぶされてしまいかねない「生身」の個人とその事情を忘れてはならないと警鐘をならす一冊だ。
※蛇足だが、制約された要件の中で効率的な進行のために通訳兼案内役として日本出身のフォトジャーナリスト住井美香なる人物が登場する。さらにこの本書巻末の解説者にちなんで以下私個人の読書体験。
私が「DAYS JAPAN」誌から学んだことは「日本人は慰安婦問題を韓国、中国だけを相手にすればいいと甘いことを考えていたら世界から次々としっぺ返しを受ける、世界を敵に回しかねないぞ」ということだ。

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