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2017年4月

2017年4月26日 (水)

本感想短編二題: #がんばっている君が好き(絵 #結布 ) #秘境ループ #濱野京子 作

二編いずれも2016年発売のテーマアンソロジー短編集に収録された濱野京子の作品という以外、具体的な発売時期、意図も、出版社も、他の執筆者も異なるのだが、私という主体が、今この時期に、立て続けに読んだという行為を介すると、共時性や共感が色々現れる。
かたや舞台が図書室と言えば、私も色々思い入れがある方だと思うが、日本の図書館行政の貧しさは今に始まったことではないし、俗にツタヤ図書館といわれる司書とコーヒーを秤に掛けたような、それ自体図書館の魂を売ったような事実があるし、ちょいと視点を変えれば、ごく最近「博物館の学芸員はがん」などと暴言というより己の知性すら貶める発言をする政治家もいるし、と残念な話題に事欠かない。
さて、肝心の本編を読めば、短編なのであまりネタバラシはしたくないが、どちらも初恋の成就に願を掛けながら、かたやリアルに誤解というほろ苦さ、こなた幻想に所謂「悪魔の取引」のバリエーションまで加えて複雑な構成を組みながら、読み終えると実はどちらも、願掛けは本当に必要だったのか?、これからも願い事は可能性を残しているではないかと考えさせる。
両作品とも願い事という奇跡を望む少年達の姿を描きながら、その価値を否定しているのではないか。特に図書室を舞台にした方の作品では、奇跡の価値の否定を問いつつ、加えて幻想に誘う存在として司書を描くことで逆説的に司書は結果を保証してくれる存在ではなく、知の導き手であり、その在り方を間違えてはいけない、という読み方もできるのではないか。さらにジェンダーへの理解共有の為に少年の男女のそれの固定化も否定して描いていることも忘れてはいけない。

「がんばっている君が好き」小学館。「あまからすっぱい物語」シリーズ第1巻。※絵を担当している「結布」は、現在、上橋菜穂子の「闇の守り人」の漫画化を連載執筆している方じゃないかな。
「秘境ループ」講談社。「ぐるぐるの図書室」収録。装画・挿絵/くまおり純。

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2017年4月15日 (土)

#韓国の漫画 韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20170415)

Yoruwokakerusonbi17「밤을 걷는 선비」(夜を駆けるソンビ)」17巻(ソウル文化社)。原作조주희(チョ・ジュイ)。作画担当は한승희(ハン・スンヒ)。16巻の記事はこちら
いつもの断わりですが、邦題は「夜を歩く士(ソンビ)」が通用していますが、私のこだわりで「駆ける」で通します。ゾンビではない。日本では士大夫ともいう、在野の地主で教養人、人格者でもある名士とか名家の旦那をさす。
15巻
の、バンパイア、귀=キィ(漢字語で「鬼」の朝鮮語発音、日本の音読み「キ」と同じようなもの)と김성열(キム・ソンヨル)の対決から一夜明け、都の中の隠れ家と思しき屋敷で目覚めたソンヨルとヒロイン、ヤンソンは、お互いの愛を確かめ合う。一方、王子(おそらく後の国王、正祖)と最初の方から出ている宮廷の兵士(※そう言えばこの人は、最初は宮中より派遣された虎狩人としてが正式には護衛士か隠密かよく分からない)は、昔、絵師が描いたキィの絵の秘密を検討し続けていた。
そして、王子は遂に、この絵はキィが日食の時ならば、昼間でも活動可能だということを現していることに気づき、急遽、宮廷の天文部署を説得して、次の日食の日時を問い詰めるが日食は不吉なこととして、宮中の極秘事項。どうやら次の日食は、近日に迫っているらしい。
王子だけでなく、キィ自身も変装して、部署の責任者に賄賂を贈って、日食の期日を聴き出していたし、ソンヨルも(※長生きしてるせいか)そのことに気づいていて、おそらくその日、キィは、宮廷を襲撃、積年の復讐を果たすつもりだと予感している。
※これは、いよいよクライマックスが近づいているのかもしれない。
※原作者チョ・ジュイの後書き漫画は、ストーリーを考えている時の自分の様子、の話。傍目にはかなり変、らしい(笑)。同氏はしばらく前から小学校の先生もしているが、児童からのおませな質問のことも描いている(笑)。

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2017年4月 8日 (土)

本感想: #ことづて屋 寄りそう人 #濱野京子 作 カスヤナガト・イラスト

死者のメッセージを受けとる女性、山門津多恵が指定された人物を尋ねて伝える連作集。前に第2巻の記事を書いてからほぼ一年を経過していた。世相は、この物語の密接な背景である東日本大震災から時の流れに惰性のように身を任せ、当事者の苦悩に背を向け、共感と想像力を失ったかのような不寛容な様相を見せているのが、痛ましい。共感、それは私がここ数年、最重要課題としているものであり、当然本作を読む際にも痛切に感じる。
そして第3巻となる本作で、シリーズは一先ず幕を下ろすようだ。今回は、各作品、設定上、確かにあってもおかしくないアイディア、同一人物に、複数回、複数人物からのことづて、というユーモラスな味を加味したり、邦楽を小道具に彩を添えたり、現在、荒んだ生活をしているように見える人に、心を幾度も救われた故人のことづてというシンプルな中に、深読み可能な凝った構成などを展開した上で、福島を舞台に、未だ故人の死を受け入れられない人、というまさに原点と言っても過言でない世界に挑んだ上で、掉尾を飾るエピソードは、ことづての相手は、あの人、というかこの人だったのか、というべき人物に捧げられる。
そこにあるのは、最近で言うならLGBTの告白にも通じる、それ自体をこれから特別視しない、もう隠さなくてもいい、さらに加えて何事も、もう自分独りで背負うな、背負わせない、という社会のあるべき原点への回帰を求めた、静かなるアピールだと私は受けとった。

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2017年4月 1日 (土)

#韓国の漫画 韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20170401)

Nabi22_2「Nabi」22巻。김연주(キム・ヨンジュ)。大元CI。21巻の記事はこちら
長い夜が続いているが、묘운(=妙雲=みょううん)の回想が入った。彼女が女主人の書院にいた頃から予知者の손소류(ソン・ソリュウ)を幻視していた。そして「迎えに来て。待っている」というメッセージをささやかれていたのだ。ミョウウンは、「私はあの子に終わりを与えてあげる」と口にした。それは殺すとか復讐ということではなく運命的なものを感じているらしい。
※やはりかつて描かれた世界とはすっかり変わってしまったようだ。
さて、飛行船自体は、文国の追撃隊の戦闘機(※やはり飛行船のようだ)が集まって来て、投降を呼びかけてきた。しかしこの中でソリュウがリュウサンを通じて伝えてきたのは、この飛行船を渡してはならない、渡せば世界の終わりが来るというのだ。※具体的にどうなるのかは全く不明
これを聴いた上で一行は、海に沈むように飛行船を不時着させて、脱出ポッドに乗って海岸にたどり着く。
一方、先に下船し文国の使者に取り残されたハリム(※確か漢字で霞林だった筈だがなぜか夏林になった)は、文国の宮廷に潜入し、相変わらず眠り続けるソリュウを奪取して背負って逃亡、水国に戻りソン家の私兵達と合流、家に戻った。※あまりにもあっという間の展開なので、もしかしたらこれも、また運命が変わったのかも、という気もする。この間にハリムの独白がかなりのスペースを割いて挿入されている、今のハリムは何故ここまで自分がソリュウを助けるのか、戸惑ってもいるようだ。やはりミョウウンと同様、変化を続ける運命に微かに意識が残っているのかもしれない。
※もともとシンプルな描きっぷりが持ち味の作者と作品なので、ここまでの解釈が難しくなってきた。作中の運命が変わったのか、私の読解不足か判断困難で何度も読み直している。

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