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2018年11月

2018年11月25日 (日)

本感想:「#風と行く者」#上橋菜穂子 作 #佐竹美保 偕成社

Kazetoyukumono上橋菜穂子の守り人シリーズ外伝の新刊長編。バルサ16歳とジグロ、ロタ王国の氏族の対立、少数民族サダン・タラム<風の楽人>を巡る因縁が二十年後に再び甦る鎮魂の物語。
いつものことながらエキゾチックな旅と冒険の物語の筆致が冴えわたる。決してケレン味があるわけでもない、むしろ簡潔な文体が精彩を放つ。今回はさらに旅の楽師、しかもこのシリーズだからただの旅芸人ではなく、一夜の恋と遊びで子供を成す、父親不在?のコミュニティが興味深い。
そして読み進むにつれて、またしても歴史の真実を巡る愛憎と葛藤。常に読者であるこちらの現実の歴史を巡る世界の対立と愛憎が交錯して物語世界に耽溺は許されず、心穏やかではいられなくなる。但しこれも、いうまでもなく上橋菜穂子の魅力、異世界の幻想物語が現実を挑発するのだ。
そして、この非常に難しい決着に、二つに一つを選んで犠牲者を出したりしない。二十年前のジグロ、現在のバルサといういずれも「よそ者」が介入し妥協点、解決策を見出すのだ。しかも真実に蓋をしない、現実状況を固定しないのも小気味いいし、対立を融和に変えて新しい世界の交流と発展を期待させるのが感動的だ。

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本感想: #ラッキーな菜子 #浜野京子 作、装画・挿絵/ #くまおり純

Girigirinohonya講談社のアンソロジー、競作リレー小説「ぎりぎりの本屋さん」収録。2016年発売の「ぐるぐるの図書室」の2年ぶりの企画第二弾といったところか。
ぎりぎりの立場に追い詰められた少年達が迷い込む不思議な今にもつぶれそうな「ぎりぎりの」ような古ぼけた本屋の物語。
「ぎりぎりの本屋」さん。そういわれて?原体験を、あるいはイメージを他人と共有できるのは何時までか。あるいはもう無理なのか。街の本屋さんはネットのブックショップの興隆の一方で減る一方。私の知っていた本屋も次々と廃業していった。かろうじて都心の鉄道の駅ビル、郊外のショッピングモールに大型書店の支店、チェーン店、あるいは鉄道自身が経営する書店が入っている。私もオンラインショップ以外で普段利用する本屋といえば駅ビル内のそういう本屋が増えた。神保町には通っているが。これからは「街の本屋」と言えば、駅ビルやモール内の書店を皆イメージするのかもしれない。
さて、ここに登場する本屋は、まだ作者、濱野京子と私がイメージを(多分)共有できる古いタイプの本屋が、現代ならではの問題を抱えた、しかし自身はそのことに無自覚な少女が、追い詰められた時に彼女を救うべく現れる、本屋とそこの店員らしき謎の少年がヒーローのごとく現れる。これは本は学びの導き手、手助けであるという寓意だろうか。
しかし、少年達はやがて、自分の危険な状況を自覚し回避できるようになる、助け合える誰かに出遭う。これは体験のことであり、体験が活かされるようになる時、本がヒーローであることは終わり、自分自身がヒーローになる、という成長のことかもしれない。

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本感想:・

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2018年11月11日 (日)

#韓国の漫画 韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20181111)

Hanagatiredo2「花が散れども」2巻。송 하(ソン・ハ)作。大元CI。1巻の記事はこちら。しかし、大きな勘違いを私はしていた。王ラアンの行脚が主人公イノクの育った地に入って、イノクと弟が再会したら、「姉さん」と呼び掛けた。イノクは女だったのだ。あえて言い訳するならそれだけ性差を意識させる描写は少ないということだ。それがわかって1、2巻のキャラクターの輪郭線を見直すと近衛兵の隊長ファヨンは女だし、近衛兵達は男女混成。王を補佐する6神官も老若男女だ。
さて、ラアンと呼ばれる王(2巻の表紙)は、世襲ではなく、ネパールの生き仏ダライ・ラマのように転生する神王制度らしい。イノクの話を通じてイノクの今は亡き祖父が知恵者で、民の寒くなった居住環境を改善する仕組みを考案していたことを知り、イノク等が暮らす村に入ると今はイノクの弟が住む家に投宿することになった。
キャラクター達もなかなか立っている。侍従長サンホはラアンに一番近い同行者で若いがかなり頭の切れる男で性格温厚。ラアンと同郷でラアンが神王の転生者として発見される以前から幼馴染。
6神官の一人、長い髪を振り乱す若い男で宮中儀礼の総監担当なのに気難しい上に口が悪くて奇行も目立つウンス。サンホとウンスは所謂悪友らしい。
サンホとウンスその他の6神官も含めたこの国の権力者たちは思惑は色々だが、この神王制度にはかなりクール、危機感は共通のようだ。
2巻では、行脚を続けるラアンが出身地の村に入ると、若い男達に襲われる。理由はやはり土地が寒くなって収穫が落ちている不満からだった。これも結果としてイノクが攻撃の最初の一撃を防いだ。
※作者の描写技術はソフトな線で、脇役は釣り目でまだ韓国漫画の類型だが、ほほ問題ない水準だろう。今後の展開は、民には「神としての王」に対し国土の寒冷化の不満が広まりつつある、この国の王制の運命は?、イノクと王の関係は?というところか。架空世界の時代劇といっても通常の中華圏風宮廷ものとはかなり違うのでやや地味だがユニークさが興味深い。

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2018年11月 4日 (日)

#韓国の漫画 韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20181104)

Kimuchi3「미스터 김치(ミスター・キムチ)」3巻。※全3巻完結。原作:채정택(チェ・チョンテク)。作画:김의정(キム・ウィジョン)。(거북이북스=亀ブックス=ゴブギブックス)発行。コミックス1巻2巻から実に丸5年ぶりの第3巻。しかし韓国の出版社と作者にしてみれば、こうして日本の一読者が、覚えていてずっと新刊を待っていたとは想像もできないだろう。
残念なことは、ここまで、3巻の刊行を引っ張ったことについて、本の何処にも、出版社のサイトにも誰からの言い訳もないことだ。一体この5年間、何があったのだ?
とにかく、ドラマは、韓日米の主役のお三方がようやく顔を合わせて、物語は終息に向かった。今更その感想、物語を一々、書き出すのも野暮ってものだろう。
今は、完結篇刊行を喜び、作者の今後の新作と活躍を祈念する。

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アニメ感想: #宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち #yamato2202 #第六章回生篇

本日、配偶者と新宿ピカデリーで観てきた。毎度最初に思うことは、原作クレジットに「松本零士」「豊田有恒」両氏の名前がないのは寂しい。色々あったことはリアルタイムのニュースと後のノンフィクションで知っているが、西崎義展が亡くなって随分経つし、そこを何とかしてもらえないだろうか。
内容は、ドラマもビジュアルも何より声優の演技陣は、主役から脇役まで最高水準。前は加藤に持ち掛けられた悪魔の取引に、この齢になると胸が痛くなるほど共感して涙をそそられたが、今回も次から次へと繰り出されるアイディアのアクロバットの数々に飽きさせない。「試される愛」「時間断層工場に始まる戦争風刺の痛切さ」「G計画のおぞましさと女性キャラの必然性」「サーベラーとガトランティスの究極的な関係の設定」「シンギュラリティに対する人間的な回答」「波動レンズという飛び切り超絶的なSFアイディアのアクション」「今度は斉藤の背負った業の発覚」etc.
エンディングクレジットに「石塚運昇」さんへの謝意があってジーンときた。

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