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2010年11月21日 (日)

本感想:アギーの祈り(濱野京子)偕成社(絵・平澤朋子)

この作者の場合、ファンタジーものかリアルものかという区別は無意味なようだ。手法が何であれ現実の風刺、寓話だ。今回の寓話は、一目瞭然。戦争難民、なかでも最大の犠牲者である子供達の問題だ。れっきと長編小説だが、前半の各章の描写は、その問題の様々な側面を風刺した掌編小説集のようにも読める。一つ私なりに各章のテーマを書き出してみよう。

第1章、戦争と難民と国際組織。第2章、難民の子供、孤児達は夢だけは持っている。第3章、難民の生産と消費。第4章、トラウマに悩まされる戦災孤児。第5章、孤児を人材活用の美名のもとに利用する政治。第6章、芸術は戦意高揚に癒しにもなる両刃の剣・・・等と。
後半、物語は動き出す。子供達が成長すると共に、各国の政治もまた動き出す。個性を発揮し始める子供達は政治に無縁ではいられない、まだ内なる個性と夢の目覚めで満ち溢れる子供を、教師達はどうやって現実に導いていくべきなのか。教師達の苦悩は続く。
教師という存在について、主人公アギーはラストで一つの結論に気付く。私は、謙虚にして当然の帰結だと称賛する。大人は誰でも一度は教育について議論し教師になることを夢見るものだ。しかしそうした大人達はこの謙虚な姿勢を忘れていないだろうか。
本筋から外れるが、主人公の姿のイメージは、李香蘭かあるいは「リリー・マルレーン」の唄かあるいは、と色々読み手によって想像可能だが、私は、崔承喜(チェ・スンヒ)をイメージしていた。

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