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2024年4月

2024年4月24日 (水)

#곽재식(カク・ジェシク)「춘향가를 가장 재미있게 듣는 법(春香歌を一番面白く聴く方法)」を読むその2 #韓国の現代SF小説

Photo_20240424191201 業務連絡:次回は五月八日(水)午後一時半からです。今日は霧雨、気象寒暖の変化の激しい事。さて、いつもの口上から、史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした、月曜会2。
前回よりのテキスト「판소리 에스에프 다섯 마당(パンソリSF五話)」というSF小説アンソロジーより一篇、곽재식(カク・ジェシク)「춘향가를 가장 재미있게 듣는 법(春香歌を一番面白く聴く方法)」を読む第二回目です。
『公教育からパンソリの代表的な一曲「春香(チュニャン)歌」を外してはならない』というデモがかなり大規模に教育庁前で行われている。何故そんな奇妙な抗議運動が?
唯一の伏線「没入鑑賞プログラム」とは何なのか?「私」はイ次長に報告し、さらに取材を進めます。まずはこのプログラムを解説する公教育AI(人工知能)にQ&A。公教育で採用されている「春香歌」は人間の名匠(名唱)の歌ではなくロボットが名匠の歌から編集合成したものだというのです。名匠の歌唱法をさらにロボットが完璧にしたものであり、これ以上の技量を魅せる歌はない、というのです。しかもこれなら地方の伝統芸能の人間の継承者がいないものでも記録保存再現公演が可能だと。しかし、それでも「私」は納得がいかない、春香歌のような有名な題目の公演なら、いくら素晴らしくても聴き飽きるのではないか?。
ところがこれに対するロボットの回答は、心配ない、それが没入鑑賞「前」処理だと。これを聞いた「私」はAIとの対話を終え、イ次長に報告します。公教育に没入鑑賞プログラムを卸している民間企業は、これを「神経補充処理」と呼んでいますが、要するに特定の記憶を都合よく消去してしまえる技術なのです。この作品世界では脳操作技術が発達して人体に損傷を与えることなく、作品鑑賞前に、常に新鮮な感動を味わう為に用いられている、それが没入鑑賞プログラム、とSFらしい謎解きが展開されてきたところで、さらに、というところで次回へ。

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2024年4月19日 (金)

#韓国の漫画 #韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20240419)

6_20240417191001「회랑식 중정(回廊式中庭)」6巻。김연주(キム・ヨンジュ)。大元CI社。5巻の記事はこちら
モノローグ『ユン、アボジ(父)がお前を買ってきたと言った』ユンは、セヒ嬢(長女)の勉強部屋の床上で一晩眠り込んでしまった。その間、セヒは起こさずに勉強を続けていた。早朝、ようやくユンが目覚めると、チェヒ(長男=大旦那)がユンの姿が見えないとセヒの部屋にやってくるが、セヒはユンを匿う。ここで、しばらくチェヒとセヒがユンを巡って、冷静にしかし緊張に満ちたやり取りが続いた。チェヒが出ていくとセヒはユンに言う「兄を殺す必要はないわ」(※5巻でのユンの問いに対する答え)。
ユンのモノローグ『その瞬間には本気だった。戻れない人生のある瞬間、思い出せない時が来ようとも。その時。俺は。』
続くモノローグ『瞬間の感情は、瞬間と共に薄められる。冬が過ぎれば雪が溶けるように。春が過ぎれば花が散るように。瞬間の残像だけ残して流れ去り、紙にも心にも記されず、ある瞬間その感情の主さえ忘れてしまえば、その時は過ぎ行く本気を、無謀、稚気、衝動と言っても構わない』
 ユンは唐突にミソクから、自分は女高普(女子高等普通学校)の「高女生」の制服だけを買った、つまり本当は学生ではないと打ち明けられる。何故ユンにだけそんなことを明かしたのかミソクの意図は不明。
※ここで気になる登場人物が現れた。チェヒの事務所に「佐藤さん」という制服の、軍人か官憲らしき人物が訪れた。日帝占領下だから当然チェヒはかしこまっている。
チェヒがミソクに洋服を買ってやる、と言い出し、ユンに自分出入りの洋服店に連れて行ってやれと申し付けた。だがそれを見たセヒが表情を固くして兄にかみついた。つまりミソクを弄ぶ気か?ということだ。ここで二人のミソクを巡る言い争いが続く、男尊女卑、身分制について。
 ここでまたミソクの回想シーンが挿入される。前巻まで私にはこれが誰かわからなかったが、自殺したチェヒの前の妻、チョンアだったらしい。そして5巻の「私、学校へ行けることになった」の続きだ。「私、教室に入れなかった。夫人はだめだって。校長先生がどうしようもなく原則主義者だったの。家庭に入って良妻賢母になれって。それが学業よりずっと立派な稼業だと。この半日(校庭の木の下で)ずっと絶望していた」
最後にミソクとセヒの会話。「ご存知ですか。近頃日本の奴らは虎の皮を狙っている。虎を殺して残った皮を」※これはおそらく風刺的な意味。「お嬢さんは優しい。私を理解できなくても優しい」
 そしてあくる日、ミソクはユンに付き添ってもらって洋服を選んだ。
 ある夜、ミソクがユンに言う「人間は欲望の為にどこまでできるのか。少なくとも朝鮮では国も売れることが証明された。ユン君みたいな人はこんなウソみたいな場所に相応しくない。私は自分を裏切るつもりはない。辛いのは女としての気分。でも女としての私の意志は喜びに満ちている。私は長い間、こんな瞬間を待ちわびていた。私は自分を恥じていない。」
 突然、チェヒがセヒに学校をやめろと命じた。家で花嫁修業でもしてろと。それでもセヒはチェヒの外出後、ミソクを帯同して登校した。途中で結婚式には韓服を着るのか、という話になり、セヒはミソクに義姉の話をする「義姉は韓服を着て愛する人と婚礼を挙げ、首を吊った」。
 学校が終わるとセヒはユンを伴って腹いせに百貨店に行く。ユンは売られる前のもうおぼろげな貧乏な家の印象を思いだす。二人のことをミソクが尾けていた。さらに何故かカウォン(チェヒの婚約者)が現れミソクの前に立ちふさがった。ミソクを喫煙室に連れ出し、これまたなぜか「佐藤」の悪口を聞かせた後カウォン「心配しないで私はあなたを見守っている」ミソク「はい、分かった」と不可解な会話をして別れた。
セヒは日傘を買い、ユンにも雨傘を買ってやった。最後にユンのモノローグ『俺はあの日、土砂降りになることを願っていたのかもしれない。家に向かう内心、そうして雨の気配もない空を見上げていたようだ』
※今度はカウォンの動きまで謎めいてきた。
※最後のページの作者の言葉『大きな足跡を残した男性独立運動家の傍には、飯を作り洗濯をして世話をした女性達がいました。植民地の人生を、万歳を一度叫び、獄中生活を送り、以後の記録はない者達も多いのです。記録は彼女達を忘れても、歴史は彼女達が共に作り出してきたのです。

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