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2024年5月

2024年5月23日 (木)

#이산화(イ・サナ)「전혀 다른 열두 세계(全く異なる12の世界)」を読むその1「토끼 굴(ウサギ穴)」(20240522) #韓国の現代SF小説

Sf12業務連絡:次回は六月五日(水)午後一時半からです。暑くなりますと、屋内施設の冷房が寒くなるほどできついです。さて、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした、月曜会2。今回から이산화(イ・サナ)の短編集「전혀 다른 열두 세계(全く異なる12の世界)」を読みます。今回は「토끼 굴(ウサギ穴)」です。
海洋研究船「ロリナ」からのコントロールルームで、深海を探査する無人探査艇「エディス」から送られてくる映像を観測している、生物学者メル。メルには他の人々には見えない、未知の海洋生物が見えるのです。その能力故に、メルは、指導教授だったアザコフ博士の言葉を回想します。過去の、火星、深海、いずれにおいても数多の学者たちが発見しながら、その後、確認されることがなかった、現象、生物の数々の事。それらを博士は、かつて生物学者ジョン・ホールデンが、進化論を覆す発見があるとしたらそれは「先カンブリア時代の地層のウサギの化石」であると表現したことになぞらえました。ウサギ穴からたった一度飛び出してきたのを目撃されながら、二度と確認されなかった存在。
メルがさらに問うた時、博士は、発見は「知」の始まりに過ぎない、その後、他者の検証を経なければ「真の知」にはならない、だがそれだけではなくて、人間は、己の脳の限界を超えた存在を発見した時、精神の安定の為に、直ぐに忘れ去ってしまうのかもしれない。それが「ウサギ穴」だと。
今「エディス」から送信されている映像にもメルしか認識できない深海生物もいれば、皆にも見えて新発見に湧きかえる人々の歓呼もあります。メルの頭の中では今、人類が次の準備を迎える時まで、新しい「ウサギ穴」の中に入っていく覚悟ができるまで、何かが再び眠りに落ちていくことを感じているのでした。
※ストーリはシンプルなのですが、作中には、確認されなかった数々の発見の中から特に深海生物に関する事例とその名が虚実ないまぜで、いくつも出てくるので読者は(多分)目を白黒させられ、さらに、さらりと「メルたちは本当に我々と同じ人類なのか?」と疑問に思わせる描写もあって、煙に巻かれた気分になるのです。
※そこで本書の巻末に作者後記で、本書が「高校の読書評説」という雑誌に月一で12回発表された短編連作であり、通常のSFアンソロジーと違ってSFファンではない、一般読者にいかにして興味を持たせるアイディアにするか、といった執筆動機がつづられています。
※その次には本作「ウサギ穴」のネーミングとエピソードの数々を作者自ら詳しく解説した文章があるのですが、ここで時間切れ、続きはまた次回で。

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2024年5月 9日 (木)

#곽재식(カク・ジェシク)「춘향가를 가장 재미있게 듣는 법(春香歌を一番面白く聴く方法)」を読むその3 #韓国の現代SF小説

Photo_20240509001601 業務連絡:次回は五月二十二日(水)午後一時半からです。今日も降ったり止んだり、気象寒暖の変化の激しい事。さて、いつもの口上から、史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした、月曜会2。
前々回よりのテキスト「판소리 에스에프 다섯 마당(パンソリSF五話)」というSF小説アンソロジーより一篇、곽재식(カク・ジェシク)「춘향가를 가장 재미있게 듣는 법(春香歌を一番面白く聴く方法)」を読む第三回目です。
没入鑑賞プログラムについて「私」はさらに取材、推測を続けます。没入鑑賞プログラムで常に初めて見聞きした時の感動を味わえる、しかも本人の性格も良くなる?本当にそんなに上手くいくのか、と問うイ次長に「私」推測を答え続けていきます。
「春香歌」は特に他のパンソリとは違う、幻想的非現実的な奇跡はありません。地方官吏の不正を風刺したリアルな物語です。だから記憶を消して聴けば、他のパンソリよりも現実的な「良い」感動だけを受けられるのです。
しかし、驚くべき短所が没入鑑賞にある。実際の人間の脳で、記憶除去手術のモデルが必要なのです。その効果、副作用を確認した後で学生たちに手術をする。そのモデルとなった「春香歌」の研究をしている大学院生は、手術は成功したものの、院生の脳には「春香歌」の関連記憶が当然脳の記憶部位を多数占めているので、術後の彼には院生時代の学習記憶が残っていないという事態が起きていたのです。不快な、負の感情も除去されてはいますが。
 これらの取材と推測には決定的な証拠はありませんが、大衆にセンセーショナルな話題性は十分ある、というイ次長の判断で番組の作成に「私」が入るところで、完結しました。では、次回からはまた新しい作品です。

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