#이산화(イ・サナ)「전혀 다른 열두 세계(全く異なる12の世界)」を読むその1「토끼 굴(ウサギ穴)」(20240522) #韓国の現代SF小説
業務連絡:次回は六月五日(水)午後一時半からです。暑くなりますと、屋内施設の冷房が寒くなるほどできついです。さて、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした、月曜会2。今回から이산화(イ・サナ)の短編集「전혀 다른 열두 세계(全く異なる12の世界)」を読みます。今回は「토끼 굴(ウサギ穴)」です。
海洋研究船「ロリナ」からのコントロールルームで、深海を探査する無人探査艇「エディス」から送られてくる映像を観測している、生物学者メル。メルには他の人々には見えない、未知の海洋生物が見えるのです。その能力故に、メルは、指導教授だったアザコフ博士の言葉を回想します。過去の、火星、深海、いずれにおいても数多の学者たちが発見しながら、その後、確認されることがなかった、現象、生物の数々の事。それらを博士は、かつて生物学者ジョン・ホールデンが、進化論を覆す発見があるとしたらそれは「先カンブリア時代の地層のウサギの化石」であると表現したことになぞらえました。ウサギ穴からたった一度飛び出してきたのを目撃されながら、二度と確認されなかった存在。
メルがさらに問うた時、博士は、発見は「知」の始まりに過ぎない、その後、他者の検証を経なければ「真の知」にはならない、だがそれだけではなくて、人間は、己の脳の限界を超えた存在を発見した時、精神の安定の為に、直ぐに忘れ去ってしまうのかもしれない。それが「ウサギ穴」だと。
今「エディス」から送信されている映像にもメルしか認識できない深海生物もいれば、皆にも見えて新発見に湧きかえる人々の歓呼もあります。メルの頭の中では今、人類が次の準備を迎える時まで、新しい「ウサギ穴」の中に入っていく覚悟ができるまで、何かが再び眠りに落ちていくことを感じているのでした。
※ストーリはシンプルなのですが、作中には、確認されなかった数々の発見の中から特に深海生物に関する事例とその名が虚実ないまぜで、いくつも出てくるので読者は(多分)目を白黒させられ、さらに、さらりと「メルたちは本当に我々と同じ人類なのか?」と疑問に思わせる描写もあって、煙に巻かれた気分になるのです。
※そこで本書の巻末に作者後記で、本書が「高校の読書評説」という雑誌に月一で12回発表された短編連作であり、通常のSFアンソロジーと違ってSFファンではない、一般読者にいかにして興味を持たせるアイディアにするか、といった執筆動機がつづられています。
※その次には本作「ウサギ穴」のネーミングとエピソードの数々を作者自ら詳しく解説した文章があるのですが、ここで時間切れ、続きはまた次回で。
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