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2024年6月

2024年6月29日 (土)

#韓国の漫画 #韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20240629)※韓国漫画現役連載最長作品?

Rure39「RURE(루어)」39巻。서문다미(ソ・ムンダミ)。鶴山文化社。38巻の記事はこちら。本の帯カバーには引き続き「深淵(심연)」とある。
※38巻でまたしても読み違いをしていた「ハベクがタマルとなり、ハルはハル、そしてミル」と読み解いていたがまるで違う。ハベクはこの深淵の「設定」の一人であり、見た目のハルはあくまでハルのかけらを取り込んだタマルのままだった。※だからハルの描かれ方は常に表情が冷笑的で、本来のハルの感情豊かさがなかった。38巻で描かれたように深淵の中で空虚とタマルは深淵の核心部を巡って見えない戦いを続けているのだ。
 ミル、ハル=タマル、ハベクの三人三様の旅が始まった?と思ったら場所としては「深淵」世界の同じ街の中にいるらしい。先ずミルが知るのは地球とルディムナーの世界が川を隔てて共存し、今はルディムナー側にいること、古代種族も現存種族も併存している、神=「空虚」の眷属として翅族が食物連鎖の最上級層に位置し「夜様」として恐れられている、
 一方ハル=タマルはこの状況を考察する。創造主の最初の子の死体から生まれた魔獣と、二番目の子、大精霊の眷属ルキアは本能的に敵対する。古の神々と魔獣に対抗するため「空虚」は古の神々に背教者として嫌悪された翅族を眷属として再現し、「空虚」は大精霊の按配に従い多くのルキアを飲み込んできた。だがハルはルキアを食べることをを拒んできた。だから「空虚」は、今のハルを飲み込んでも力が不十分ではないのか?
空虚」は「完全な神体」を取り戻したい。深淵を前哨基地であり、最初の神に奪われた身体と二番目の神に奪われた精神を取り戻し完全な神に戻るための橋頭堡。であると考察したところでハル=タマルは、ハルのかつての部下の一人渓谷の翅族スマッテイーと出会う。彼等はミュールゲンと翅の神の力で翅を取り戻し、ここの「聖所」に連れてこられたと言うのだ。聖所というならこの深淵の核心部かもしれない。ハル=タマルはあくまでハルとして案内を請うのだった。
 ミルの方はチャキと出会う。だが会話内容から彼はあくまでこちらの世界のチャキであり、こちらの世界のミルだと思って対話しているのを悟る。
 そしてハベクは、前巻で精霊(幻獣)イクサイクが出会った、こちらの世界のミルと出会う。※またややこしくなるがハベクは、こちらの世界の「設定」の一人なのでこのミルが、ハベクにとっての本物のミルということになる。
 こちらの世界のミルは何か思うところがあってハベクを拘束するのだが、気が変わって彼を追い出しイクサイクも出るように促す。※こちらのミルにも何か深い闇=設定らしきものがあるらしい。
 イクサイクとハベクが出た所で、ミルとチャキが出くわす。するとハベクが激しく動揺し始めた。それを見たミルは何かを直感したのかハベクに問う「果ての島(ハルとミルの故郷)を知っているか。どこにある?」
するとハベクは空を指さす。そこにはぼんやりと「天空城」が雲間から現れていた!。
ハベクの姿も変容し始める。周辺に怪異が生じ、イクサイクは激しく恐怖し、ミルはハベクに呼びかける「ハベクしっかりしろ!、タマルさましっかりして!」と。それでも反応がないので最後の頼みで「起きろ、シン・ハル!」と。
すると、ハベク=姿は変容した長髪のタマルだったが、目を覚ました。怪異は収まる。ミルはつぶやく「私を騙したな、彼奴はまた私を騙した」※ハル=タマルの言っていたように、ハベクは「設定値」の高い「設定」の一人、どころではない、その中にいたのは「ハルのかけら」だったということだ。ハベク本人にはその自覚は無いようだが。
 この時、スマッティーに案内されていたハル=タマルは翅族の「聖所」宮殿?らしき場所で、冷酷にもスマッティーを殺害し「通行証」を奪ったところだが突然血を吐いた。この症状は「設定」外の名を呼ばれた時に生じるもので、同時に大きく「設定値」が揺らいだような感じがした。
それでもハル=タマルはスマッティーに変装して「聖所」に侵入する。
 目覚めたハベクは、本人に自覚はなくてもまるで屈託なく昔通りの朗らかなハルだった。この不条理な「敵地」ですらも人々は何故かハベク=ハルに親切だった。ここでハベク=ハルはこちらの世界のミル=※ここから原作で[ミル]と表現され始めた=に助けを求めよう、と提案したがミルは拒絶「あなたの知る[シン・ミル]は[シン・ハル]と本当に仲良かった?あなたが良いと思っても、ここで一番信じられないのは[シン・ミル]だ」。シン・ミルのモノローグ「私は目的の為なら手段を選ばない。[シン・ミル]も同じだろう。」
この時、ハベク=ハル、ミル、イクサイクがいる店内でテレビから速報が流れる。翅族の聖所でスマッティーが殺された件で、容疑者は「シン・ハル」変装したハル=タマルの姿も映され、手配されていた。
この世界ではハルと恋人同士の設定のハベク=ハルは、当然いきり立つが「聖所」が何かもわからない。そこでミルは冷静に説いて聞かせる「『果ての島』(ハルとミルの故郷)こそ『聖所』だ。まさしく未完成の天空城のようだった島。あの人もそこにいる筈だ」と。
※ここで、同時発売の40巻に続く。しかしこの「深淵」篇、SFにある、人間の内面を探求する内宇宙(インナースペース)や、エイリアンが特定の地球人のイメージを具現化再現してみせる世界に加え、今時ならネットの仮想世界、メタバースのキャラクターと本物のギャップ、を複雑に組み合わせた感じで、一段と読み解くのに苦労する。今回も間違っていたが、今後も苦労しそうだ。

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2024年6月19日 (水)

「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より #유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読むその1 #韓国の現代SF小説 #韓国 #SF

Sf_20240619194601 業務連絡:次回は七月三日(水)午後一時半からです。昨日は大雨で梅雨入りかと思ったら、今日は暑い事。目が回りそうでした。では、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。
先ずは、이산화(イ・サナ)の短編集「전혀 다른 열두 세계(全く異なる12の世界)」から「그땐 평화가 행성들을 인도하고(その時は平和が惑星達を導いて)」を読む2回目。子供達の代表、セソンのいうところでは、彼らは皆、お互いの意志を対話せずとも理解しあえるというのです。つまり彼らの能力は共感力、テレパシーと分かった処から、締めは、政府高官秘書ヒョンフクは衝撃を受けつつもそれが事実でも感情に振り回されるだけだと反論を試みますが、しかしセソンはぶれません。私達は学習します。それに我々は大人になるし、次々と我々のような子が生まれる。世界はいずれ我々の手に入るのですと。ヒョンフクは、彼らの話を否定できません、新しい人類の出現にただ恐怖に震えるしかない。敗北者の精神にセソンは「信じてください。世界はもっと良くなるのです。我ら皆に」
そして、本編より面白い?作者自身による解説。タイトルはニューエイジ思想の流行った時代のミュージカル「ヘアー」の劇中歌の歌詞。設定は、ジョン・カーペンターのリメイクSF映画「呪われた都市(※邦題「光る眼」)、そのオリジナル映画の原作ジョン・ウィンダムの古典的SF小説※日本での翻訳題は「呪われた村」。ついでながら、このリメイク版は日本での公開時私も観ましたが、カーペンターの映画にしては地味な作品でした。
さらに、作者個人は、映画館ではなく自宅で観た初めての恐怖映画で子供心に強烈な印象を受けた。そしてあらゆる創作物で「世代間対立」は旧世代にとって新世代への「恐怖」として描かれている、という解説。そこから我々の世代よりはるかに「人間性」を持った存在が誕生したらどう反応するか、が発想の基だったと。以上です。
 そして続いての新作は昨年出た「人類の終末」テーマのSFアンソロジー「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より、유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読んでいきます。
プロローグは、中国が新疆ウイグル自治区を新疆省として再編される際、社会統制用AI「新疆ネットワーク」を導入すると、たちまち数万名の中国人を「作り出した」。自律走行車両と調理用アンドロイドに先ず公民IDナンバーを付与。彼らは経済活動と納税義務を果たした。「タンパク質基盤の中国人」と異なり彼らは五十%以上の所得税率を適用され、社会保険からは除外された。
その後、新疆ネットワークは数百万名の集積回路を内蔵した中国人を誕生させて、経済活動に導入。彼らの役割は、低所得層よりさらに劣悪な環境の低所得層になることでした。
ついに新疆ネットワークは終身政権を確定し、全国人民代表大会で全たんぱく質基盤中国人の中産層化を宣言。西欧諸地域も類似した政策を導入し、某国から独立。一世紀以内には、国連は各国を統治するAI議員議会に代替されました。
※一気に畳みかけるようにマクロな話は終わり。次回からはミクロなドラマ本編が始まります。

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2024年6月 5日 (水)

#이산화(イ・サナ)「전혀 다른 열두 세계(全く異なる12の世界)」を読むその2「그땐 평화가 행성들을 인도하고(その時は平和が惑星達を導いて)」(20240605) #韓国の現代SF小説

Sf12_20240605002801業務連絡:次回は六月十九日(水)午後一時半からです。大雨続きの後、いきなり快晴、気温が一気に上昇。体調維持に気をつけないと。
さて、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。
今回から이산화(イ・サナ)の短編集「전혀 다른 열두 세계(全く異なる12の世界)」を読む2回目。
今回は「토끼 굴(ウサギ穴)」のネーミングとエピソードの数々を作者自ら詳しく解説した文章。続いて、
同短編集の二作目「그땐 평화가 행성들을 인도하고(その時は平和が惑星達を導いて)」を読みます。
「ウサギ穴」とはルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の冒頭、懐中時計を持った白兎を追ったアリスが落ちていく穴の事、で始まり「先カンブリア代」のウサギとは、作者の創作。その他も、欧米の疑似科学ネタ、再検証されなかった深海探査の発見魚類や関係者の名前からネーミングをとった、と。
それがいずれも、さすがの私も、知らなかったトピックばかりでした。
このように、作者自身の解説が面白いので、テキストとして同書からもう一作読むことにしました。
そこで第二話「その時は平和が惑星達を導いて」政府高官が、十代の子供達の政治的要求事案の請願を受けている場面から始まります。
かつて地球に落ちてきた彗星の影響だったのか?その後、生まれた子供達は世界中で、優しく、行動力があり、団結して理想的政治を要求する政治運動を展開しだしました。
そんな世界の、韓国での一場面。政府高官の秘書官と思しき「ヒョンフク」は、子供達の代表である「セソン」に、
『立派な事案だが、各方面に合意を形成する必要がある』とお決まりの回答をしたところ、
セソンは『我々は、合意形成に時間がかからないのが、今のあなた方、大人との違いです』と明言します。
セソンのいうところでは、彼らは皆、お互いの意志を対話せずとも理解しあえるというのです。つまり彼らの能力は共感力、それは一体?というところで時間切れ、続きです。

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