「エルスカル(ELSKAR=엘스카르)」第7巻。우나영(ウ・ナヨン)作。鶴山文化社。第6巻の記事はこちら。「バ・エルスカル・アメジスタ、それが約束の宝石。王冠に装飾された宝石=バエル。約束の宝石は敵に。それを開くキーはこちらにあるのです。勝った方が全てを得るのです」。
※訳訂正、ドロイ伯爵と訳していたが以降、公爵に訂正。ノクシド公爵は侯爵に訂正。
密かにビオラを助けていることが露見し王命により紛争地帯に派遣されることになった第二王子。これが最期と覚悟した王子は密かにビオラを呼び出し「変わらないでください。ビオラ」と伝える。そして第二王子は寂しく旅立っていった。
新しい後宮の懐妊祝いのパーティーが開かれた。ドロイ公爵と、ビオラも婚約者ベール嬢として参席した。だが参席者達の注目はこのベール嬢=ビオラに集中していた。ビオラが誰かにそっくりだと噂しあっているのだ。
そしてノクシド侯爵も参席。ドロイ公爵の読みでは、皇帝とノクシド侯爵の二人の独裁が増長している。この度の後宮は、ノクシド侯爵の息がかかった者。ならば狙いはやはりビオラか。
会場でビオラは、以前出くわした、ランゲ族狩りのリーダーでエルスカルを食べて超人的な戦闘力を発揮していた男と出会ってしまう。ノクシド侯爵の息子ハプロン(※前巻までハフロンと記述していたが今後訂正する)だ。お互いにランゲ族の気運を感じ合った二人。※ハプロンはビオラの感じた通りランゲ族なのか、単にエルスカルを食べているが故なのか、まだ判明しない。またハプロンはノクシド侯爵直々の指揮で動いているが、正式な嫡男ではなさそうだ。むしろ内密の息子のようだ。
だがこれで、ノクシド侯爵側にビオラ「約束の子」の存在が明らかになってしまったことはドロイ公爵にも理解できた。
一方ランゲ族のリーダー、マハ達も、ランゲ族の潜伏に頭を悩ませていた。「人間」の協力が必要だ。ドロイ公爵が信用できるのか、会見することにした。さらに北方のランゲ族との共闘も必要だ。そちらには「約束の子」ビオラが向かうことになった。
北方のランゲ族の潜伏地は、予想を超えた大規模な「地下の村」だった。そしてリーダー「マペ」に出会い、今までただの伝説に過ぎないと思っていた「約束の子」が現れたことで、マペは共闘を約束する。
マハ達と会見したドロイ公爵は淡々と、あっさりと、ドロイ公爵の領地にランゲ族が移住することを受け入れた。だがマハにはまだ疑念があった。
ドロイ公爵のような権力のある「人間」がなぜランゲ族に協力するのか。ドロイ公爵の侍女でランゲ族であるセレットに尋ねるが、「閣下は約束を守る、責任を果たすお方です」とそっけない。マハ達から見ると同じランゲ族でも「人間」と長くいるとああなるのかな、と違和感を覚えた。
皇帝が宴を開いた。皇族関係者も多数参席する大きな宴だ。ドロイ公爵とビオラも参席する。社交界の№1レディ、レジーナ・フィオレも現れ、皇帝派の流す噂には注意するように警告した。
だがここで今度は皇帝がビオラ奪取を強行した。独りで休息中をエルスカルを身に着けた男に襲わせたのだ(エルスカルの宝石を持つ相手にはビオラの力は通じない)。
ビオラの不在に気付いたドロイ公爵に第二王子の臣下が接触してきた。第二王子が密かに命じたビオラへの「最後の」助力だ。そこで提案されたのは、ビオラを救出する際にひと騒動起こして、人々に、皇帝とドロイ公爵が、婚約者ベール嬢(ビオラ)を巡って諍いを起こしていると思わせるのだ。つまり皇帝派とドロイ公爵の対立を公然のものとするのだ。力関係では圧倒的に不利だが、そうなれば「大義名分はドロイ公爵の方にある」と。
腹を括ったドロイ公爵は、これを実行し、ビオラを奪還。直ちにドロイ公爵の領地に帰還、さらに、王宮への魔石の供給の制限を実行した。
ランゲ族のマハ達との連絡係をしていた侍女セレットもこれに続いて領地に帰還。しかし、ビオラに対する態度は何故かそっけなかった。
※一方ランゲ族の南方のリーダーの青年カルトが新たに登場。何らかの事情で妻に先立たれていることは描かれている。このカルトはマハ達と、仲間だが異なる動きをしていた。彼のグループの仕事は「巡察者」であり、もともと戦闘力があり、すでに貴族達とも接触、何らかの協力関係もあった。マハ達がドロイ公爵と接触したと聞いて「人間一人に全て命運をかけるわけにはいかない。それに、自分たちの能力をもっと高く買ってもらおう」と思惑を巡らせていた。
ハプロン率いる狩人がマハ達を発見、エルスカルを食べながら超能力を発揮して襲い掛かり、苦戦しているマハ達の窮地を救ったカルトは「巡察者」にだけに伝わる記録「エルスカルの呪い」を語る「人間の欲に気を付けろ。奴らの欲を見張れ。奴らの欲が心臓に達したら黒い呪いは一つにしろ。深く不吉な呪いは、隠されるものなく探し出し、罪を深めよ」
ランゲ族は人間と関係を断ったので、具体的なことは全くわからない、ただ人間に注意する為、人間に対する好奇心を消すために言及を禁じ、古い記録を引っ張り出した巡察者しか知らないことだ、と。
そしてカルトもドロイ公爵と会見する。南方のランゲ族は、他地域の純粋なランゲ族とは違う、人間社会の中で生きてきた、勢力も他地方のランゲ族よりも強くて大きい「例えば、南側の貴族勢力の一部を動かしている」
※この後具体的にドロイ公爵とカルトがどんな話し合いをしたのかはまだ描かれていない。次にビオラとも「あなたにすぐ話したいことがある」というシーンだけ。ただビオラは北方のランゲ族のリーダー「マペ」と南方のランゲ族のリーダー「カルト」を思い浮かべて「いつか私も選ばねばならない」と物思いに耽る姿が。
ドロイ公爵領に、逃れてきたランゲ族が集まり、もうすぐ北のマペと南のカルト側のランゲが協力に来る。
ラストは、出立前のカルトが貴族夫婦?に挨拶している場面、夫人の方がカルトに思い入れしているようだが、夫の方は「カルトは自分の妻を今も愛しているんだよ」と冷静。カルトが言っていた、南側の貴族勢力らしいが、どんな密約をしているのか?
最近のコメント