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2024年7月

2024年7月31日 (水)

「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より #유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読むその4(20240731) #韓国の現代SF小説 #韓国 #SF

Sf_20240731171501 業務連絡:次回は八月十四日(水)午後一時半からです。では、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。
 昨年出た「人類の終末」テーマのSFアンソロジー「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より、유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読むその四回目。
人類の終末という事態の渦中で、ヘミンは、これが最後、と思って読んだ小説は、結末を読めない。こんな皮肉な事態の中で、さてヘミンはどう行動するか?
ヘミンにわかるのは、この本の著者が創作アンドロイドであり、その個体認識番号だけです。そこにバチカンのサン・ピエトロ大聖堂からAI議員が、2257年11月4日から窒素基盤安楽死センターを起動(※窒素というのは、人類も、地球の大気も構成する元素です)、続いて宇宙ステーションも稼働停止、墜落させて、電磁気パルスを発生させて、集積回路基盤生命体の活動を止める、と宣言しました。※電磁気パルスを電気通信ネットワークに流してショートさせる。つまり人間だけでなく、機械も活動を停止する、ということです)。
 だがヘミンが注視したのは、そのAI議員アンドロイドの個体認識番号は、この小説の作者のそれと同じだったのです。
この状況でヘミンは、この本だけを携えて、バチカン行きの旅客機に飛び乗りました。父母からの電話ではバチカンでは、人間が抵抗軍を作って、AI議会に暴動を起こしている、と聞きました。
バチカンに降り立ったヘミンが見たのは、人間達がサン・ピエトロ大聖堂とそれを守るアンドロイド達に暴動を仕掛けている光景でした。
逃げる隙も、言い訳する間もなく、ヘミンは人々に巻き込まれ、押され引かれて、遂には行軍の先頭となり、最後の一人となって、大聖堂の中まで入ってしまいました。そこの祭壇に一人待っていたAI議員アンドロイドは、まさしく、ヘミンが探した小説の著者の個体認識番号の持ち主でした。落ち着いた態度で彼は、ヘミンに、話でも攻撃でも何でもお受けしますと話しかけます。言い訳を始めるヘミン、というところで次回へと続きます。
※今回で一気に最後まで読了するつもりでしたが、今朝のNHK朝ドラ「虎に翼」に興奮した私が、その話を夢中でしていたので時間が無くなりました。

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2024年7月18日 (木)

#韓国の漫画 #韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20240718)

7「エルスカル(ELSKAR=엘스카르)」第7巻。우나영(ウ・ナヨン)作。鶴山文化社。第6巻の記事はこちら。「バ・エルスカル・アメジスタ、それが約束の宝石。王冠に装飾された宝石=バエル。約束の宝石は敵に。それを開くキーはこちらにあるのです。勝った方が全てを得るのです」。
※訳訂正、ドロイ伯爵と訳していたが以降、公爵に訂正。ノクシド公爵は侯爵に訂正。

密かにビオラを助けていることが露見し王命により紛争地帯に派遣されることになった第二王子。これが最期と覚悟した王子は密かにビオラを呼び出し「変わらないでください。ビオラ」と伝える。そして第二王子は寂しく旅立っていった。
 新しい後宮の懐妊祝いのパーティーが開かれた。ドロイ公爵と、ビオラも婚約者ベール嬢として参席した。だが参席者達の注目はこのベール嬢=ビオラに集中していた。ビオラが誰かにそっくりだと噂しあっているのだ。
そしてノクシド侯爵も参席。ドロイ公爵の読みでは、皇帝とノクシド侯爵の二人の独裁が増長している。この度の後宮は、ノクシド侯爵の息がかかった者。ならば狙いはやはりビオラか。
 会場でビオラは、以前出くわした、ランゲ族狩りのリーダーでエルスカルを食べて超人的な戦闘力を発揮していた男と出会ってしまう。ノクシド侯爵の息子ハプロン(※前巻までハフロンと記述していたが今後訂正する)だ。お互いにランゲ族の気運を感じ合った二人。※ハプロンはビオラの感じた通りランゲ族なのか、単にエルスカルを食べているが故なのか、まだ判明しない。またハプロンはノクシド侯爵直々の指揮で動いているが、正式な嫡男ではなさそうだ。むしろ内密の息子のようだ。
だがこれで、ノクシド侯爵側にビオラ「約束の子」の存在が明らかになってしまったことはドロイ公爵にも理解できた。
 一方ランゲ族のリーダー、マハ達も、ランゲ族の潜伏に頭を悩ませていた。「人間」の協力が必要だ。ドロイ公爵が信用できるのか、会見することにした。さらに北方のランゲ族との共闘も必要だ。そちらには「約束の子」ビオラが向かうことになった。
北方のランゲ族の潜伏地は、予想を超えた大規模な「地下の村」だった。そしてリーダー「マペ」に出会い、今までただの伝説に過ぎないと思っていた「約束の子」が現れたことで、マペは共闘を約束する。
マハ達と会見したドロイ公爵は淡々と、あっさりと、ドロイ公爵の領地にランゲ族が移住することを受け入れた。だがマハにはまだ疑念があった。
ドロイ公爵のような権力のある「人間」がなぜランゲ族に協力するのか。ドロイ公爵の侍女でランゲ族であるセレットに尋ねるが、「閣下は約束を守る、責任を果たすお方です」とそっけない。マハ達から見ると同じランゲ族でも「人間」と長くいるとああなるのかな、と違和感を覚えた。
皇帝が宴を開いた。皇族関係者も多数参席する大きな宴だ。ドロイ公爵とビオラも参席する。社交界の№1レディ、レジーナ・フィオレも現れ、皇帝派の流す噂には注意するように警告した。
だがここで今度は皇帝がビオラ奪取を強行した。独りで休息中をエルスカルを身に着けた男に襲わせたのだ(エルスカルの宝石を持つ相手にはビオラの力は通じない)。
ビオラの不在に気付いたドロイ公爵に第二王子の臣下が接触してきた。第二王子が密かに命じたビオラへの「最後の」助力だ。そこで提案されたのは、ビオラを救出する際にひと騒動起こして、人々に、皇帝とドロイ公爵が、婚約者ベール嬢(ビオラ)を巡って諍いを起こしていると思わせるのだ。つまり皇帝派とドロイ公爵の対立を公然のものとするのだ。力関係では圧倒的に不利だが、そうなれば「大義名分はドロイ公爵の方にある」と。
腹を括ったドロイ公爵は、これを実行し、ビオラを奪還。直ちにドロイ公爵の領地に帰還、さらに、王宮への魔石の供給の制限を実行した。
ランゲ族のマハ達との連絡係をしていた侍女セレットもこれに続いて領地に帰還。しかし、ビオラに対する態度は何故かそっけなかった。
 ※一方ランゲ族の南方のリーダーの青年カルトが新たに登場。何らかの事情で妻に先立たれていることは描かれている。このカルトはマハ達と、仲間だが異なる動きをしていた。彼のグループの仕事は「巡察者」であり、もともと戦闘力があり、すでに貴族達とも接触、何らかの協力関係もあった。マハ達がドロイ公爵と接触したと聞いて「人間一人に全て命運をかけるわけにはいかない。それに、自分たちの能力をもっと高く買ってもらおう」と思惑を巡らせていた。
 ハプロン率いる狩人がマハ達を発見、エルスカルを食べながら超能力を発揮して襲い掛かり、苦戦しているマハ達の窮地を救ったカルトは「巡察者」にだけに伝わる記録「エルスカルの呪い」を語る「人間の欲に気を付けろ。奴らの欲を見張れ。奴らの欲が心臓に達したら黒い呪いは一つにしろ。深く不吉な呪いは、隠されるものなく探し出し、罪を深めよ」
ランゲ族は人間と関係を断ったので、具体的なことは全くわからない、ただ人間に注意する為、人間に対する好奇心を消すために言及を禁じ、古い記録を引っ張り出した巡察者しか知らないことだ、と。
 そしてカルトもドロイ公爵と会見する。南方のランゲ族は、他地域の純粋なランゲ族とは違う、人間社会の中で生きてきた、勢力も他地方のランゲ族よりも強くて大きい「例えば、南側の貴族勢力の一部を動かしている」
※この後具体的にドロイ公爵とカルトがどんな話し合いをしたのかはまだ描かれていない。次にビオラとも「あなたにすぐ話したいことがある」というシーンだけ。ただビオラは北方のランゲ族のリーダー「マペ」と南方のランゲ族のリーダー「カルト」を思い浮かべて「いつか私も選ばねばならない」と物思いに耽る姿が。
 ドロイ公爵領に、逃れてきたランゲ族が集まり、もうすぐ北のマペと南のカルト側のランゲが協力に来る。
 ラストは、出立前のカルトが貴族夫婦?に挨拶している場面、夫人の方がカルトに思い入れしているようだが、夫の方は「カルトは自分の妻を今も愛しているんだよ」と冷静。カルトが言っていた、南側の貴族勢力らしいが、どんな密約をしているのか?

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「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より #유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読むその3(20240717) #韓国の現代SF小説 #韓国 #SF

Sf_20240718082601 業務連絡:次回は七月三十一日(水)午後一時半からです。では、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。
 昨年出た「人類の終末」テーマのSFアンソロジー「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より、유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読むその三回目。
建築設計デザイナーのヘミンが目覚めると朝のニュースで、世界AI議員議会は、11月4日を起点として「人類の終末手続き」を開始すると決定した、と発表した、と伝えるのです。突然の事態に、ただ当惑して、市庁舎の建築部の事務所を訪れたヘミン、と言う件からです。
事務室でAIアンドロイドの担当者は、しかし、そこでもまた詳しい事態は知らされていないという事で、何もわかりませんでした。失意のヘミンは、市庁を出ますが、そこでも、いつもの日常と変わりない光景が続き、ヘミンは、暇な一日を持て余しながら過ごします。
あくる日、ヘミンは、出勤しますが、上司によるとやはり詳細な情報は来ていない、現行業務を遂行する要請しかありませんでした。
 勤務時間終了後、警備アンドロイドが自殺未遂を図ったフレディの席を片付けるために集めた荷物を見かけたヘミンは、そこに一冊の本を見つけます。それは「今時」では珍しい、革張り装幀の「紙の本」でした。
 ヘミンはその本を持ち帰ります。その後の、一日中、ヘミンは本を読み続けました。百年前の流行小説でした。
季節が「冬」しかない世界で、「神の声」が聞こえる「振り」をして神官になった少女は、夏、秋のある世界へ向かう途中、船が難破して「季節のない」世界に漂着します。その世界の人々は季節のない世界への恨みを「神官」である少女に向け、彼女を害そうとするので、少女は逃亡、洞窟中に逃げ込みます。そこで少女は謎の声を聞きます。
 というところで、本の最後の章は終わり、その続きがありません。ヘミンは呆然とするのです。
※マクロな世界では人類の終末という事態の渦中で、ヘミンは、これが最後、と思って読んだ小説は、結末を読めない。こんな皮肉な事態の中で、さてヘミンはどう行動するか?というところで次回へと続きます。

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2024年7月12日 (金)

#韓国の漫画 #韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20240712)※韓国漫画現役連載最長作品?

Rure40 「RURE(루어)」40巻。서문다미(ソ・ムンダミ)。鶴山文化社。39巻の記事はこちら。本の帯カバーは「トヨン(도영)」(篇)となった。
39巻で、この世界ではハルと恋人同士の設定のハベク=ハルに、ミルは冷静に説いて聞かせる「『果ての島』(ハルとミルの故郷)こそ『聖所』だ。まさしく未完成の天空城のようだった島。あの人もそこにいる筈だ」と。
さらにミルはハベクを攻める「この土地の名前は何だ」ハベクは答えられず、うろたえる。そこでミルはさらに続ける「地名すらつけられない程、虚弱な世界だ」「設定値があるのは、強制的なルールがなければ直ぐ崩れてしまう世界だからだ」「居住する生命体も他の世界のコピーしかできない」「どうにかタマル様まで飲み込んだが消化不良のようだな」「最初からおかしいと思っていた。この深淵は、空虚とタマル様が作ったと聞いたが、設定値が一番高いハベク。深淵の皆が好きなハベク。[ミル]さえ優しくしてくれるハベク。そしてタマル様を嫌いになったシン・ハル。これが傑作だ。恋は盲目、になったタマル様は騙せても、私は直ぐ気付いた」「空虚が嘘をついた」「シン・ハルがタマルを嫌いに?話にならん。ハルは一番大切なものを絶対に手放さないのだ」「お前(ハベク=ハルのかけら=つまり空虚)は深淵ですら、一度もタマル様を手放したことがない」「否、もしやタマル様を繋ぎ止める為に深淵を作ったのか?シン・ハル?」
※拙文でお分かりだろうか?。つまりまた、ここまでのドラマ展開を「空虚」のウソとしてひっくり返したのだ。それを見破ったミルが、ハベクの中の空虚、というハルのかけら、
を問い詰めているのだ。
そこで、ここに、この世界=深淵の[シン・ミル]が現れた。彼女に向ってシン・ミルが言う「タマルがお前に気をつけろと言っていたな。ルアーが、ルアーの印章に気を付けろ、とはな」
※つまり、この深淵の傷だらけの[シン・ミル]をシン・ミルが見ると直ぐ、32巻でシン・ハルから取り込めなかった印章の精霊だったとミルには分かったのだ。
だが[シン・ミル]は「今はハベクのもの(者)だ。印章と呼ぶな、この世界のシン・ミルは私なのだ」と。
これを聞いたシン・ミルはせせら笑うが、[シン・ミル]は続けて言う「ルアーはただ流れゆく群集体。数え切れぬ次元、計りようのない時間を積み重ねてもルアーは変わらない。種としての限界に達していると思っていた。ところが今私達([ミル]とハベク)は天敵であり、抗えぬ相克だったのに、二人が出会い全く新しいものが生まれたのだ」「見ろ、お前にも驚異だろう?」
※これもややこしいが[シン・ミル]=精霊ルアーと、ハベク=ハル=翅族は、始祖の時代からの合い入れない関係=天敵。その二人がこの世界=深淵で愛し合っているではないか、と勝ち誇っている。
それでもシン・ミルはひるまず「それはただの雑種(混種)だ」と言い放ち「宿主に寄生するハリガネムシ。寄生虫をルアーと認識するなど、印章。お前は汚染された。治療を受けよ」と印章=[シン・ミル]を取り込もうとするが、[ミル]はこれを拒絶。
怒るシン・ミル「何故だ、お前の真の主人は私だぞ」と叫ぶ。だが[シン・ミル]は冷静に答える「忘れたのか、私をシン・ハルに送ったのはお前だぞ、忘れてしまったのか。目覚めるまで時間がかかったからな。先代ルアーだったシン・ミョンファ(=大国ワン・ウィライの大神女)は姉妹であるシン・ミョンジを救う為に翅族ソネッティの子と契約した。それが始まりだ」と。
※またしても、新たなる謎の話が始まったらしい。
シン・ミョンファの妹、シン・ミョンジは回復不可能だった。ミョンファはミョンジを救うため、自分のルアーの体、ルアーの印章、ミョンファとミョンジの隔離の三つを行った、そうして二人の故郷「果ての島」へミョンジを送った。そうすれば平凡な女として生きられるはずだった。だが生き残ったのはミョンジだけではなかった、ミョンジの中に黒い翅の神を作り出す翅族の実験の成果が残っていたのだ。ミョンジは妊娠した時、腹の中の子に、その力を宿しているのを悟った。しかし、ミョンファがミョンジにしたようにルアーの力をこの子に与えれば、子供は助かる。ミョンジ自身は狂人として余生を送るかもしれないが。これは避け得ないこと。避けられないことを指す言葉「日中逃影」にちなみ、この子の名前を「トヨン(도영= 逃影)」と名付けた。
生まれ成長したトヨンは女の子で、ルアーの力も記憶も封印されていたが、自分に対する何か尊大なものを感じてはいた。その為に、世間的には孤立、不良扱いを受けていた。当時の島の女性家長は死産、夫も早死が続く中、新たな婿に手を出して妊娠した。愚行だが、自分が直系の何者かであることを証明したかった。そして胎内のルアーと黒い翅族の双子の内、語りかけてくる黒い翅族を感じた。その邪悪な誘いに応じて、トヨンは初めてルアーの力を発現し、ルアーの精霊を分離し、黒い翅族に送ったのだ。
だが、双子が生まれるとルアーの力も継承され、トヨンはルアーの全てを失った。黒い翅族であるシン・ハルの存在は完全に忘れ、シン・ミルには「お前の所為で全てを失った」と突き放した。
ミルは、ハルに問う、母について話し合えるのはもうお前しかいない、私はどうすればいいのか。だがハルにも答えはない。
ミルは続けて問う、印章達が自分で決めろと言った。お前=ハベク=ハルがルアーか否か自分で判断しろと。お前はどう思う。
ハベク=ハルは答える「私はハベクだ。そうでなければクヤ(タマル)のわきには立てない。今でも生々しく思い出す。彼を本気で殺そうとした、傷つければ嬉しかった。ルアーだろうと翅だろうと何の役に立つの?空虚とソネッティの子が追い続けてくるから又クヤを傷つけるわ、私がハベクでなければ。」※32巻の記事参照。
この答えにミルは怒る。「勝手なことを言うな。お前の所為でタマルは偽りの世界の養分になっている。ではファイルはどうなる。ワン・ウィライ王国が来る。皇帝と大神女が大軍を率いてやってくる。お前の恋愛ごっこの所為で何百万の民草が危険なのだぞ」
ミルは立派なファイルの「王のルキア(=大精霊の眷属)」になったのだ、と気づいたハルは答える「あなたの言うとおりにするわ」
 そして、この深淵で暮らしてきたハル(外見はハベク)は、ファイルのシン・ミル、この世界のミル、精霊イクサイクを率いて「聖所」へと導く「天路(하늘길)」を行く。そこは、無数の空間がつながっている。定められた順序通りに通らなければ、迷路となり触手に取って食われる。
 場面は変わり、先に「聖所」に侵入したハルの姿のタマルは、黒い翅族を次々と虐殺しながら血まみれで宮殿内を進み続ける。
 更に場面は転換。舞台が深淵の中の世界から、元のファイル王国に戻った。
どこかに潜み、翅族を人体実験してルアーを人造しようとするミュールゲンとその配下達は、実験体が次々と苦しみ絶叫しながら死んでいく状況に直面していた。
そこには「深淵」の本体である球体が空間を揺るがす渦の中に存在していた。そこはミュールゲンとその配下達にも理解しがたい場所だった。球体の中は「ルディムナー」と同じ一つの「世界」なのだと推測するしかなかった。
この非常事態に対処するために、直感的にミュールゲンは自ら、深淵の球体の中に向かうと宣言するのだった。
ミュールゲンは言う「あの中で死ぬと言っても本当に死ぬわけではない。それに気になるではないか。『空虚』が作り出したあの世界も」※「あの世界」とは、深淵の球体の渦の周囲に描かれている、地球を模した世界のこと。それがハル=タマル、ハベク=ハル達がいる「深淵」の中の、地球の街を模した世界と同一なのかは、まだ不明。
※この巻も伏線の回収と新しい設定解説が描き込まれて、読みこなすのに苦労した。が、新たにまた物語が動き出したようだ。

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2024年7月 3日 (水)

「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より #유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読むその2 #韓国の現代SF小説 #韓国 #SF

Sf_20240703193901 業務連絡:次回は七月十七日(水)午後一時半からです。東京は熱中症警戒警報、蒸し暑い。相変わらず目が回りそうでした。では、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。
 昨年出た「人類の終末」テーマのSFアンソロジー「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より、유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読むその二回目。
プロローグで、世界各国がAI(人工知能)による政治、AI議員によって統治が行われる世界のもの語りが始まります。いよいよ本編が始まりました。
建築設計デザイナーのヘミンが目覚めると朝のニュースで、世界AI議員議会は、11月4日を起点として「人類の終末手続き」を開始すると決定した、と発表した、と伝えるのです。突然の事態に、ただ当惑して、出勤路に出たヘミンですが、外は平穏。いつもと同じ露店の煙草売りの老人、修理費を乞うアンドロイド労働者らの姿。会社に入れば、いつもと同じ警備アンドロイドがあいさつを寄こします。事務室に入ると、同僚のエリスンがやはり同僚のフレディが飛び降り自殺を図ったが、外の掃除アンドロイドが助けてくれて入院したが命は無事だ、と教えてくれます。
そして社長が職員の前に現れ、「人類の終末」について、いずれ当局が詳しい話を伝えてくるだろう、それまで冷静に仕事に従事してくれ、とだけ話がありました。
今ヘミンの勤務は、一日二時間、週三日のみ。※AI議員達による治政で、人類は相当安楽に暮らし、肉体労働や雑用はアンドロイドがやってくれていることが垣間見えます。
ヘミンがしているプロジェクトは、市庁の建築部が発注した、地上6階、地下6階という共同墓地ビルの設計デザインですが、これが人類の終着地点、自分も生きてビルが完成した姿を観られないのでは、と思うと仕事に身が入りません。※既に人類の墓地は土地不足であることが窺えます。
勤務時間は仕事が未完のまま終わりエリスンや同僚に飲みに行こうと誘われますが、ヘミンは断り、市庁舎へと向かいます、アポなしでの訪問だと庁舎内のアンドロイドに建築部への案内を請うと、殺風景な室内に連れていかれます。その隅には気の置けないコーナーがありました。というところで今回はここまで。次回へと続きます。
※今時の韓国小説の文章は、彼彼女の区別なく「그」ですので、男女の区別が明確にできませんので、個人名で訳しました。
※「人類の終末」とはいかなるものか、具体的な説明が描かれないまま話が進行していますので、登場人物も私達読者もじれったい、もどかしい思いをしながら読み進んでいかざるを得ないのです。これもSFならではの叙述テクニックです。

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