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2024年8月

2024年8月28日 (水)

「사랑 과 혁명 그리고 퀘스트(愛と革命とクエスト)」より #남세오(ナム・セオ)「벨의 고리(ベルの尾)」を読むその2 #韓国の現代SF小説 #韓国 #SF

Sf_20240828174101 業務連絡:次回は九月十一日(水)午後一時半からです。先週は甲子園で京都国際高校が話題を集め。韓国映画「ソウルの春」が封切り。深夜にはパリパラリンピックが始まります。
では、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。
今年7月に刊行された新作ハードSFアンソロジー「사랑 과 혁명 그리고 퀘스트(愛と革命とクエスト)」より、남세오(ナム・セオ)「벨의 고리(ベルの尾)」を読みます、その第2回目。
2022年12月ストックホルム市庁で開かれたノーベル物理学賞授賞式でデモ騒ぎを起こした女性が、自分が勤めるCERNのホイッパー・キャリー博士とそっくりだったことに気づいた「キル・サンウ」類まれな、見真似と微細な数値も見定める記憶力を有している彼は、騒ぎを起こした女性が掲げていたプラカードに記された「神はサイコロ遊びをしない」という言葉と、謎の2つの数値を記憶します。
後日職場の友人アレックが、粒子加速器の測定値にノイズが混じっている、とキル・サンウにボヤきます。彼が提示したグラフと数値データを見たサンウは、直ぐに、妙な数値の周波数を見極めました。しかも、その数値は、あのプラカードに記されていた2つの数値のうちの一つでした。授賞式の騒ぎとプラカードのことをサンウから聞いたアレックは、何も知らないサンウにアインシュタインと量子力学の「量子もつれ」の問題について解説します。
ここから本作前半のハイライト、7節に渡って「神はサイコロ遊びをしない」を巡る量子力学の量子もつれの解説が本編を離れて作者から読者へ直接、解説が始まります。※私は、本文を訳すより、日本語の科学解説を読むのに時間を要しました。ジョン・スチュワート・ベルの「ベルの不等式」、ニールス・ボーア、アスペ、クラウザー、ツァイリンガー、の量子力学者らの名前が出て、解説が終わり本編に戻ります。
謎の周波数について調査したアレックは、その結果をサンウに話し出します。ノイズの発生したのはCERNだけではない、アメリカのLIGO、プエルトリコのアレシボの電波望遠鏡、日本のニュートリノ検出器カミオカンデ、さらに火星探査機パーサヴィアランスでも同じ周波数のノイズが測定されたというのでした。アレックの関心はもはやそちらの現象で、サンウの関心はあくまで女性の方です。しかし最後にアレックは一枚のポストイットに書かれたメモをサンウに渡します。というところで次回へと続きます。

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2024年8月14日 (水)

「사랑 과 혁명 그리고 퀘스트(愛と革命とクエスト)」より #남세오(ナム・セオ)「벨의 고리(ベルの尾)」を読む #韓国の現代SF小説 #韓国 #SF

Sf_20240814175801 業務連絡:次回は八月二十八日(水)午後一時半からです。危険な暑さは続きますが、都心では日中ににわか雨が降ったようです。では、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。
 昨年出た「人類の終末」テーマのSFアンソロジー「인류의 종말은 투표로 결정되었습니다(人類の終末は投票で決定されました」より、유권조(ユ・コォンジョ)「침착한 종말(落ち着いた終末)」を読むその五回目。クライマックスです。
AI議員アンドロイドと対面したヘミンは、ようやく、自分はただ、あなたが書いた本の続きを読みたいだけです。と本を取り出して目的を打ち明けました。アンドロイドとはいえ、驚いた?AI議員は、今の議員個体に代替する前に書いたもので、続きは存在しないと話します。
落胆したヘミンですが、それでも、次にどうするはずだったのか話してくださいと頼みます。
するとAI議員は季節を失った人々が季節を取り戻していくかを語るのでした。話が終わった処に人間の暴徒達は押し掛け、AI議員は破壊されてしまいます。ヘミンは、警備アンドロイドの瓦礫と負傷した人々の間を一人歩いて空港に戻り、帰航します。
そして安楽死センターとAIを破壊する電磁気パルスは地球全土で発動し、人類は週末を迎えました。

そして、次のテキストは、今年7月に刊行された新作ハードSFアンソロジー「사랑 과 혁명 그리고 퀘스트(愛と革命とクエスト)」より、남세오(ナム・セオ)「벨의 고리(ベルの尾)」を読みます。
2022年12月ストックホルム市庁で開かれたノーベル物理学賞授賞式でちょっとしたハプニングが起きました。その年は量子力学の実験による証明をした3人の物理学者に授与されたのですが、会場の参席者の中からピケ(※日本のピケを張る=バリケードをつくる、という意味とは異なりスローガンを書いたプラカードを指すらしい)を掲げた女性がいて、直ぐに警備に拘束されたのですがそのピケに書かれていたのはドイツ語の「神はサイコロ遊びをしない」アインシュタインが量子力学を拒絶した時の有名な台詞と、その下に謎の数字が二種類書かれていたのです。
この模様を放送していたモニターを何気なく眺めていた、CERN(欧州原子核研究機構)の各種計測装置のメンテナンス業務従事者に過ぎない、しかし、卓越した記憶力と「見真似」の能力を持つ「キル・サンウ」は、その数字と文言ではなくて、拘束された女性が、当研究所の研究者ホイッパー・キャリー博士とそっくりだったことに驚いたのでした。
後日、何気ない風を装って、キャリー博士の研究室を訪ねたサンウは、スウェーデンに行ったか、授賞式の騒動を知らないか尋ねてみるのですが、何も関係ない、知らない様子でした。他人の空似だったか、とそれっきりで終わる筈でしたが。後日、研究者の友人、アレック・ホフマンが粒子加速器の計測値データに奇妙なノイズが混じっている、とぼやく相手をした時のことです。
というところで次回へと続きます。ここからいよいよ量子力学の理論を巡る、奇妙な物語が始まります。

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2024年8月11日 (日)

#韓国の漫画 #韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20240811) #今の日本人に一番薦める韓国純情漫画

Sori13 「대답하세요! 프라임 미니스터(お答えください!プライムミニスター=総理)」13巻。(イム・チュヨン)。大元CI。12巻の記事はこちら
※今回も繰り返し前の記事を再掲しておくが、何が「今の日本人にお薦め」か?今の醜悪と無関心、倦怠感に満ち、知性の劣化した日本政治の現実と違って、この漫画の政局ドラマは理知的でリアルながら熱い、LGBTを初めとしたポリティカルコレクトも理想的に描かれ、しかも愛憎のドラマも美しく、全てが活気に満ちている。
 前巻からの続き、トーマスの母、ジャーナリスト故エリン・カーディナルの写真展でノエルは一枚の写真に瓦礫の中でピアノを弾く母を見た。ノエルがトーマスに語る回想では、ノエルの母、オペラ歌手でスイス人のレオノーラは、公演旅行中に爆弾が投下された被災地に赴き、その後の人生を変える程の影響を受けたという。さらに回想は遡り、高校生時代、レオノーラはイギリスで、やはり高校生だったエリンと出会い親友となり、ドイツの音楽学校に行くのをやめてイギリスで音楽の勉強をしたというのだ。そのエリンがトーマス・カーディナルの母だったことに、ノエルは自分とトーマスの関係に運命的なものを感じてしまうのだった。
 しかしノエルは、トーマスとその母エリンの関係に疑問を感じ、実家の財産管理を一手に引き受けている在米の妹エルウィン・ノエル(※4巻に登場)に調査を依頼する。公式のエリンの物故年によると、その時トーマスは生まれたばかりの筈で彼女の死を見たとは思えない。そこにエリンの死因について秘密があると考えているのだ。
クリスマスの季節が近づき、議会も休会になる。政治家達はこの時期を利用してイメージアップの為に各々ボランティア活動などを始める。という訳でノエルとトーマスは組んで、子供達向けの演劇活動に精を出すシーンがしばし展開する。題目は子供向けにアレンジしたロビンフッド。その帰途でトーマスは、ノエルに、登場人物の死別の場面になぞらえて語る
「私は母の死を見たことがトラウマになっている。君を愛している以上、忍耐心で君を許さねばならないこともあるはずだ。だけど死なないで。私の前で死ぬこと、それだけは許せない。」
 エルウィン・ノエルからトーマスと母の死因に関する報告がノエルに入った。この事実をいかにしてトーマスに伝えるか、秘書のメリス・リューは、婚約者であるノエルが伝えるべき、恋愛とは邪悪なドラゴンから愛するものを救う為に心身をどれだけ犠牲にしてでも戦うものだ、それが嫌なら恋愛するな、という何とも妙な例えで説得する。
ノエルは、トーマスに伝えた、エリンは、重度の産後憂鬱症による、薬物の過剰服用で死んでいた。それをトーマスは祖母から「事故で死んだ」とだけ聞かされ思い込まされていた。今ようやくトーマスは自分で閉じ込めていた過去から自分を解放したのだ。
 ノエルとトーマスはクリスマスを南国のプライベート島で二人っきりで過ごすことにする。ここからは、二人きりで激しく口論したり、別行動になったり、政治討論を徹底的に交わして、仲直りして、またベッドを共にし激しく愛し合う、ようするにイチャつきシーンが続く。
 そして新年を迎え、議会が再開される。女王が議会解散宣言文にサインし、議会は解散、全ての議員は資格停止、ウエストミンスター寺院は沈黙に覆われ、総裁選挙の熱いレースが始まる。
ここで、7巻に登場した、メディア業界の魔王と呼ばれるアーサー・ケーンが、さらに初登場その長女アテリア・シンプソンと共に再登場した。アメリカのニクソンとケネディ以降、メディアが合法的に選挙の行方を左右していたのに、今のベンジャミン・ノエルとトーマス・カーディナルの二党首は、その従来メディアを必要としない程、世間に注目と人気を集めている。この動きにアーサー・ケーンとそのスタッフ達は自分達のメディアグループの将来に危機感を持っていて、この二人の内、特にノエルを何とかして、自分達のグループに引き入れられないか、と思案していた。
そして前首相ヘレンの秘書で、ノエルに請われてスタッフに招聘されたベアトリクスにアーサー・ケーンから会見の申し入れがあった。だがこれを聞いたノエルは、どうせ目当ては自分だろうと、自らアーサー・ケーンに会いに行く。
一方ベアトリクスは、以前にノエルにスキャンダルを仕掛けた女性記者と会う。そして依頼する「あなたに頼むしかない。トーマス・カーディナルを守って」というところで続く。
※作者後記によると15巻で完結の予定だそうだ。
※メリス・リューが、ノエルを説得する場面にちなんで、韓国の新造語「누칼협」を紹介した。これは「だれがお前を刃物で(そうしろと)脅したというのか」という意味の文章をさらに略したもので「自己責任でやること、やったことだろ」というきつい言い方だ。

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