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2024年9月

2024年9月25日 (水)

「사랑 과 혁명 그리고 퀘스트(愛と革命とクエスト)」より #남세오(ナム・セオ)「벨의 고리(ベルの尾)」を読むその4 #韓国の現代SF小説 #韓国 #SF

Sf_20240923134801  業務連絡:次回は十月九日(水)午後一時半からです。では、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。ようやく涼しくなりました。次は台風の心配か。
今年7月に刊行された新作ハードSFアンソロジー「사랑 과 혁명 그리고 퀘스트(愛と革命とクエスト)」より、남세오(ナム・セオ)「벨의 고리(ベルの尾)」を読みます、その第4回目。
2022年12月ストックホルム市庁で開かれたノーベル物理学賞授賞式でデモ騒ぎを起こした女性、自分が勤めるCERNのホイッパー・キャリー博士とそっくりな人を探る「キル・サンウ」は急遽空路でアイルランドのダブリンに向かい、ロレインに対面します。しかし、ホイッパーのことを話し始めた途端、ロレインの態度は拒絶的になりました。
それでもロレインは自分の理論については話してくれます。しかしサンウがあなたの理論の数値をCERNのアレックが証明したと話してもあまりうれしそうではありません。既に自分の「飾った宇宙」の中に生きていれば、リアルな宇宙よりもそちらが大切だ。科学者はそういうものだと語るとロレインは、そういう「自分の飾った宇宙」を脅かす存在がいたらそいつには何をするかわからない、だからこれ以上関わってはいけないと警告してサンウを追い立てました。
しかし、サンウが外へ出ると、既にそこにはホイッパー・キャリー博士が待っていました。食事にさそったホイッパーにサンウがついていくと、レストランでホイッパーは真相を語りだします。キャリーとは、ホイッパー、メルセンヌ、そして「両者が重複したホイッパー/メルセンヌ」が存在している。ホイッパーもメルセンヌもアインシュタインの信奉者、つまり決定論者です。ホイッパーはこれを真実として人がこれを知り受け止めなければならない、と考えてノーベル賞授賞式で騒動を起こした。これに対してメルセンヌは、決定論は「個人が何の罪を犯そうと、それはあらかじめ決定されていたことだから罪悪感を持つ必要がない」と人は考えてしまうから、これを知られてはならない。そのためには量子力学の不確実性が認識される方がいい、と考えている、と。
 そして「キャリー」は問うのです。今、ジュネーブではアレックと、ホイッパーとメルセンヌのいずれかが食事をしている。私がホイッパーかメルセンヌか分かるか?、ホイッパーなら大した問題ではない、だがメルセンヌなら、秘密に気付いた相手を殺す、と。
どちらのキャリーか分かった途端に、アレックかサンウのどちらかが殺される。サンウはこれは量子レベルの話ではない、人間の世界でそんなことが起きる筈がない、と思いつつも恐怖で一度は目を閉じます。しかし、目を開けた時に気付いてしまいました。利き腕から目の前のキャリーがメルセンヌであることを。彼女の持つ食事用のナイフが妙に鋭いことを。
※量子レベルの理論を、人間個体レベルのスケールにダイナミックに「大風呂敷」を広げると、こういう話になる、という一例でした。
では、次回からは、また新しいテキストで。

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2024年9月21日 (土)

#韓国の漫画 #韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20240921)

7_20240911190901 「회랑식 중정(回廊式中庭)」7巻。김연주(キム・ヨンジュ)。大元CI社。6巻の記事はこちら
6巻で、学校に行くのを兄チェヒ(大旦那様)に止められた妹セヒ嬢が夜、読書する使用人ユンを相手に、なにやらいたずらっぽく?策を練る。兄に隠れて着替えて学校へ通う「拠点」が必要ね。そんなこと直ぐにバレると相手にしないユンに、セヒは、あなた(=ユン)がチェヒの目を惹きつければいいのよ、とそそのかす。
※この件、セヒがどこ迄本気なのか読者にもよくわからない。
だが、セヒは付け加える「私はあなたと目を合わせるつもりはないわ」と。だが、ユンは「ところで目を合わせる練習をしましょうか。今度は唇を合わせる練習をしてみますか」と誘う。
 チェヒが、館からミソクに車を出し、ユンに随行させて送らせる。どうやら、高級料理店で賓客(後のチェヒへの、ユンの問いからは、また日本人の官憲「佐藤」かもしれないが、ユンは直接見てはいないし、相手は、はっきり出ていない)の接待に同席させるらしい。
外で待つユンが呼び出された時にはミソクも客もいない、チェヒだけ。
そこで酒を飲まされながら、拝金主義だの新女性だのと話しかけながらセヒについて問う。カマをかけてきているようだ。しかしユンは、はぐらかすかのように?
「ミソク嬢は大旦那様を狙っていました。大旦那様の目に入りたがっています」と言い出す。そして酒に酔って、そのまま寝込んでしまった。
 あくる日、すっかり真昼になってやっと館で目を覚ましたユンはミソクの家を知ろうとし始める、意外にも誰も知らない
(※読者から見れば、それでよく雇用したものだ?)そこで、毎週レヒ(チェヒとセヒの弟、若旦那様)がミソクと会って2ウォン払うことを聞いて、その時自分を同行させてくれと頼むのだった。
 チェヒがスガン君(セヒの婚約者候補?)を連れてきて、セヒにお茶の相手をさせた。その間にチェヒはまたユンを長々と問い詰める、昨日の会話の内容を何も覚えていないのか。セヒと何か関係しているのか。
 ユンは館を抜け出して街を彷徨う。様子を不審に思って追ってきたセヒがユンを捕まえた。ユンはまたセヒに「やってみてはダメですか。唇、あわせる練習」そして今度は二人は本当にキスをする。だが、この場面を帰宅中のスガン君が車中から目撃していた。
 帰宅後の晩、独りになったセヒは激しく狼狽する。そしてなぜか、また、亡くなった義姉チョンアのことを思い出す。
雪の降る夜、中庭に面した回廊で制服姿で独り踊るチョンア。
靴も履かずに雪の積もる中庭に出て踊りながらセヒに問う「セヒ、私の名前知ってる、そう、チョンアよ」
※ほとんど説明抜きなので唐突に思える言動の連続なので、何とも言えないミステリアスな雰囲気に読者も翻弄される。さらに、途中にモノローグが意味ありげに挿入されている。
※これは一人称で「己(つちのと)未(ひつじ)年」と韓国では呼ばれる1919年の、3月29日、三・一独立運動に呼応した「水原」の妓生「金香花(キム・ヒャンファ)」が妓生三十余名を率いた集会を目撃した女工が、その場で共鳴し、集会に参加し「大韓独立万歳」を共に叫んだ感動、高揚感を表現したものだった 。
※作者後記では『己未年3月29日。水原の妓生キム・ヒャンファの主導の下、水原の妓生組合所属妓生30余名が健康診断を受けに行く慈恵病院の前で独立万歳を叫びました。そこは水原の中心街で植民統治機構が集まっていました。気概漲(みなぎ)るデモで妓生達は逮捕され、首謀者であるキム・ヒャンファは拘束され、6ヶ月の獄中生活を送りました。彼女の齢22歳の時のことであり、以後の行跡は不明で、2009年になってやっとその功績が認められ、大統領表彰を受けました』
※キム・ヒャンファの、その後の生涯、その生死は、現在に至るまで不明なのだそうだ。

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2024年9月11日 (水)

「사랑 과 혁명 그리고 퀘스트(愛と革命とクエスト)」より #남세오(ナム・セオ)「벨의 고리(ベルの尾)」を読むその3 #韓国の現代SF小説 #韓国 #SF

Sf_20240911171801 業務連絡:次回は九月二十五日(水)午後一時半からです。まだまだ暑いです。では、いつもの口上から、おそらく(笑)史上初にして唯一、韓国・朝鮮語自主学習教室数多あれど、韓国の現代SF小説をテキストにした月曜会2。
今年7月に刊行された新作ハードSFアンソロジー「사랑 과 혁명 그리고 퀘스트(愛と革命とクエスト)」より、남세오(ナム・セオ)「벨의 고리(ベルの尾)」を読みます、その第3回目。
2022年12月ストックホルム市庁で開かれたノーベル物理学賞授賞式でデモ騒ぎを起こした女性、自分が勤めるCERNのホイッパー・キャリー博士とそっくりな人を探る「キル・サンウ」に同僚のアレックは一枚のポストイットに書かれたメモをサンウに渡します。そこには彼女の名前は「メルセンヌ・キャリー」アイルランド人とありました。ホイッパー博士と同じ姓だと分かった以上、二人はどんな事情があるにせよ、姉妹に違いない、と確信したサンウですが、ホイッパーに問い詰めても、否定され続けます。その一方でホイッパーは自分の研究については熱心に話します。自分の研究は量子力学をコンピューターシステムの暗号化に応用することだ、そこに「素数」計算が関係してくるのだ、と。
さらに彼女は語りだす。我々の生きる宇宙に不可欠なものは、無限の連続は存在しないことなのだ、と言い、古代ギリシャのツェノンのパラドックス「アキレスは永遠に亀に追いつけない」を引用し、この世界に「無限」は存在しない、ミクロ構造を突き詰めれば最小限の単位「プランク」定数が存在する。結論としてこの世界は有限なのだ。
一方アレックは、謎の周波数について調査を続け、サンウが見たメルセンヌ・キャリーのプラカードのもう一つの数値が謎の周波数であることを見つけ出し、「ノイズではない」ある物理的現象である、それが何かを実証するのだと意気込んでサンウに語りました。
ここで作者の解説が入ります。数学に「メルセンヌ素数」というものがあり、これが物理学とは文字通り桁違いな数値を扱うのだと。
そして、突然ホイッパー博士は姿を消しました。手がかりを無くしたかに見えたサンウは、ホイッパーがアイルランド語で「完全」を指す言葉であり、「メルセンヌ素数」は数学の「完全数」と対で出現すると知ると、ますます二人の関係を確信し、さらに、二人にこの名を付けた母親「ロレイン・キャリー」がアイルランドのベルリン大学トリニティカレッジの現職教授であり、彼女の三十年前の博士論文が「モワレ現象(※干渉縞)」に関するものであることを突きとめました。モワレ現象とは極めて短い周波数の異なる音が重なると大きな音に聴こえる、しかし短過ぎて人間には連続した音に聴こえることです。
サンウは、急遽空路で当地に向かい、ロレインに対面します。しかし、ホイッパーのことを話し始めた途端、ロレインの態度は拒絶的になりました。というところで次回へと続きます。

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2024年9月 6日 (金)

#韓国の漫画 #韓国純情漫画( #순정만화 )感想:最近読んだ原書あれこれ(20240906)

4_20240903111101「티 나는 사랑(=顔に出る恋)」4巻。조민영(チョ・ミニョン)作。鶴山文化社(학산문화사)。3巻の記事はこちら。4巻ではヒロインの홍사애(ホン・サエ)の過去がさらに積み重なってきた。生まれた時から四つの病名を抱え、三度の手術を受けた。その為にサエの母親は心労でサエに対する精神を患っていた。サエが、ナムチュとチエの弟妹と同居しているのも、サエの体だけでなく、この母親からサエを遠ざける為でもあるらしい。サエは、過去を忘れない為に大人になってから、胸の手術のきれいな傷跡の隣に、わざと縫いあとのようなタトゥーを入れている。※その一方で、サエがナムチュに言った何かを忘れてしまっている。これがナムチュをヤキモキさせている。
 サエの務める大手百貨店のVIP顧客向けの販促サービスセールが始まった。そこに某専務夫人が来たのだが、この人が札付きの厄介者らしい。そして偶々サエに絡んで、彼女がサンプルの化粧と衣装を身に付けるモデルをする羽目になった。これが胸の空いている衣装で、しかも、この百貨店にうかつにもチエがサエの母を誘って連れてきてしまっていて、サエと鉢合わせしてしまう。サエの胸の傷を見てしまった母はうろたえて、介抱される。このサエの母と難癖をつけた専務夫人には、シン課長が対応してくれた。
 ナムチュの誕生日が来る。ナムチュは誕生日をナムチュの友達の店でサエと二人で祝おうと誘う。サエは嬉しくて色々と準備をして楽しみにしていたが、当日に、サエの仕事のライバル、VIP顧客対応のパク・ジェナが病院内で仕事中のナムチュに誘いをかけてきた。最初は相手にしないナムチュだったが、ここにまたしても偶々、通院してきたサエの母親が現れる。ジェナをナムチュの恋人と思い込んだ彼女は、ナムチュはサエと距離を置いた方が、サエの為にもいいかもしれない、などと言い出して、ナムチュも、ジェナを彼女として連れていけば、動揺したサエが(※読者にとってはまだよくわからない何かを)思い出すかもしれない、と考え直して、ジェナを帯同してしまう。
しかし、これを見たサエはショックを受けて、立ち去ってしまう。そして馴染の店でやけ酒とやけ食いを始めたサエの前に現れたのは、またしてもシン課長だった。さらに店を出た二人は帰途中の公園で、やはり公園で酔いを醒ましていたナムチュに、積極的なジェナがキスをしているところを見てしまった。※こういうアクシデントの連続を畳み込むのは、やはり韓国ドラマならではだ。
 翌朝、サエはナムチュに、シン課長と付き合う、と宣言してしまう。
※この巻は、既に去年の暮れに刊行されていたのだが、いままで私が見逃がしていた。
よくあるラブコメ展開、だが、読者から見れば、サエがナムチュだろうがシン課長だろうが、本気で恋をしたら、また顔に出てしまうのではないか、それをどう克服するのか。母親の事も含め、サエの心がどうなっていくのか今後も注目だ。

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2024年9月 1日 (日)

本感想: #girls(ガールズ) #濱野京子 作 #牛久保雅美 絵 #くもん出版

Girls 『いつ、だれと出会うかは偶然のたまものだ。』プロローグのフレーズに、出会いのもたらす幸も不幸も脳裡に呼び起こされる。そこに必然はない。功罪もない。それが生きていくということだ、だが人は、出会いの偶然を必然に、意義あるものに、きっと輝かせられる。多感な年頃の少女達に作者、濱野京子からのメッセージを感じる。母と娘二人暮らしという十五歳の少女三人の友達の物語が、各々の一人称語りで、文字通り、くるくると視点を入れ替えて語られる。その母子関係も三人三様だ。一筋縄ではいかない。だが個々のエピソードは日常的で特別なことではない筈だ。しかし、少女達はそこに小さな違和感を見出していく。それは見過ごしがちな女性の生き辛さだ。だが友達と母と共に、そんな辛さもきっと乗り越えていける、そんな現実と願いが続いていく。
※母と娘の二人暮らしという、設定に、私達夫婦共に人生最大の影響を受けた漫画家、藤子不二雄の藤本弘、安孫子素雄両先生が母親だけの家庭だったという事実を想起した。

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